夜景の素敵なちょっとお高いレストラン。少し緊張する。
わざわざドレスで来るような店でもないのだし、いつものより少し高い普段着。
一緒にいるのは私をお店に誘った彼。更に言うならお金を払うのも彼なので私は気兼ねする必要はないでしょうね。

席に案内されて、夜景が綺麗なので驚いた。
彼も凄いねと言いながら笑っている。あまり思ってないわねその顔は。あれか、もう何回も来たから見飽きちゃったよハハハってやつか金持ちめ。
下を見下ろして、高いところに来るとやってしまう遊びをしようとしたら、そもそも高すぎて人が見えなかった。
下が輝いていて下ばかり見てしまうのだけど空を見てみる。
「…星が見えないね」
「ああ、うん、そうだね」
空を見上げていると彼も見上げて頷いた。これが地上の星か、違うな、うん。
星を探そうとして空を見ていたら食べ物が出てきた。
これが世界三大チンピラか。うん、食べたことないし緊張するね。そもそもチンピラじゃないね。
フォアグラって何だっけ。トリュフが茸?キャビアが卵だっけ?じゃあフォアグラが。
「…っ!」
フォアグラが何か思い出した途端口に入れたそれが逆流を始めた。私的に三口分あるそれの二口目を飲み込んだ直後だった。
そうか、鴨か。内臓か。
吐きそうになったのは悟られなかったようで安心した。
別に、『オムライス食べられないんですぅだってひよこさんがかわいそうじゃないですかぁ』なんてタイプの人間ではなかったはずなんだけど。むしろ私は『じゃあお前ケーキやプリンも食うなよ』っていう人間だ。鴨だけ差別するなんてそれこそ偽善。
それにそれ用の鶏っていうのは段々育児をするって遺伝子を取り除いていくと聞いた。卵を食べるのはもはや仕方のないことだしむしろ卵は好物だ。
そんなことを考えて現実逃避してみても目の前に鎮座するフォアグラは変わらない。あと一口分。フォアグラの作り方など知らぬ鳥の内臓ではない落ち着け私。

フォアグラは食べた。帰ってから赤ワインのソースと共に口から出てきた。
彼とは別れた。知らん。内臓を嬉々として食べる男と付き合ってられるか。
つまり私が嫌だったのは拷問のような作り方などではなく内臓を食べるという行為そのものが嫌だったのだ。それでも牛肉は食べる。だって牛肉は内臓じゃないじゃん?知らないけど。知りたくないからもういいや。

とにかく内臓は食べない。


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