先生勉強教えて下さいいや分からないトコ多いし俺理解に時間かかるんで先生も帰るの遅くなりたくないでしょえぇ先生家近いんですかじゃあ丁度いいじゃないですか先生の家で教えて下さいよ俺の家族なら大丈夫一晩帰らなかったくらいでどうこう言うような家族じゃないですってほらテストも近いし?何か言われたら俺が押し掛けたんですって言うから大丈夫大丈夫。

その後もごにゃごにゃ言い続ける先生を引き連れて先生の家に行く。何で場所知ってるのなんてそんなの愛の力に決まってるじゃないですか!

「範囲どこまででしたっけー」
「ここからー、…ここまで」
形式的に教科書を開いて範囲を聞いた。
「えっマジで、違うところ勉強してたわー」
しょんもりと肩を落としたら、「大丈夫今からでも間に合うよ」と笑顔を向けられた。テストの内容が先生の可愛い所を紙いっぱいに書きなさいとかだったら満点取れる自信はある。
「先生トイレ借りまーす」
いきなり立ち上がってそう言ったら少し驚いたような顔をしてトイレの場所を教えてくれた。

「それじゃ先生、ちょっと教科書見えないんで音読はお願いしました」
「見えないならそこにいるのをやめればいいと思うよ」
トイレから帰って来た俺を待っていたのは先生の項でした。先生は教科書とにらめっこしていて俺が戻ってきたのには気付いていない様子。
俺はそれこそ蜜に集る虫のごとくふらふらと先生の背中に吸い寄せられていった。
「え、わ、戻ってきたんだ、それで、何で、…?」
そんな訳で先生は俺の腕に抱かれています。健全な意味で。
何で、とかそんなの先生の項のせいです俺は悪くありません仕方のないことなのです先生が可愛い仕草及び時折見せる格好いい顔とか詰まるところ先生の全てが俺を悩殺しているわけですね。だからこうして虫が集るのも仕方ない仕方ない。
先生の項に顔を埋めて先生の朗読待機。
でも背中が気になるようでなかなか読んでくれない。
顔を上げれば先生の項が目の前に。触りたいなぁ匂い嗅ぎたいなぁ舐めたいなぁ早く読んでくれないと実行に移しちゃいますよ先生。
体感時間で五分は待った。俺耐えた。おいしい餌を前に耐えた。ご褒美を頂戴しても文句はあるまい。
「先生、これから俺が何しても気にしないで下さい」
ぎゅう、と抱きしめる力を強くすると混乱したように「え?」と連呼する声がした。誘ってるのか可愛い。
先生の首筋にそっと舌を延ばしてみる。触れた瞬間先生の肩が跳ねた。
「気にしないで下さいって言ったじゃないですか」
苦笑しながら言ったら先生には聞こえてなかったようでここに来た時のようにごにゃごにゃと何か言っていた。むしろ来た時よりも支離滅裂で何を言っているか分からない。
「先生」
「だからつまり…、? 何…っひ!」
尚も続けようとする先生を呼び止めた。言いたいことがあったわけでもなく、冷静になれという意味。
先生が大人しくなった頃にさっき舌で触れた箇所に噛み付いた。噛み付いたと言っても甘噛み程度なんだけど。
甘噛みしつつ時折本気で噛んだら痛いと叫んだ。色気がないなと心の中で笑う。色気のあることなんかしてないんだから当然なんだけど。
「俺は痛くないです」
噛みながら言ったからちゃんと発音できてないかもしれない。実際先生から口答え的なものは何一つ返ってこない。
発音できていないと言えば先生の発音もあやしい。呂律回ってませんが、俺がトイレ行ってる間に酒でも飲んだのでしょうか。
先生の謎言語を無視して噛み続けていると、段々皮膚の向こう側はどんな味なんだろうかと思えてくる。先生はいつも生徒には優しくて甘いから、そんな味がするのだろうか。そんなの幻想で妄想なんだけど、先生ならありえるかもしれない。人間みんなニュートラルなんだって偉い人が言ってたから一人くらい血肉が甘い人がいたっていいじゃないか。
そのいるかもわからない一人を求めてがりがりと噛み続けていたら口の中で小さく鈍い音がした気がした。何かが弾けたみたいな音。音と言うより感覚かもしれない。
先生から唇を離してみるとじわりと赤い液体が滲んできた。眺めているとじわじわ溢れてきて、段々鉄の臭いがしてきた。
「せんせい、ちぃ、でた」
先生に気取られないように小さく笑って、まだ目的を達成した訳じゃないともう一度先生を強く抱きしめて赤く染まった所を舌で舐めた。
果たしてそれは、甘かったのか否か。結論からいえばそれは勿論、匂いを感じたときから分かるように、血の味しかしなかった。
でも先生から溢れる蜜と思えばそれはまさに蜜なのである。少し鉄分多めの。



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意味って何ですか


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