無機物〜派生
※モブ


あーあー可愛いなぁ可愛いなぁ!
何度だって口に出して好きだと告げても何の反応も返してくれないから思わず釘を打つ力を強めてしまう。
打つ度に身体は痛みに反応しているのに悲鳴を上げたりせずに震えている。
見る者を威圧するような異形が自分の手によってこんな惨めな姿になっている事実に恍惚とせずにいられるものか。
釘を打つ度に震える身体も悲鳴を上げないよう努力した結果情事を連想させる声を漏らす喉も全部全部大好きなんだけど声がいつも内側にこもっているから早く生で君の声が聞きたいな!
「い゛っ…」
何の手ごたえもなかった釘が一瞬沈んだ気がして、不明瞭だった声が少しはっきり聞こえた気がして嬉しくなった。完全に穴開いたらもっともっとよく聞こえるよね、そう確信してまた釘を叩き始めた。
抑えてた声も段々抑えられなくなったのか無駄と悟ったのか隠さなくなってきて、さっきの喘いでるみたいな声も良かったけど今の隠さない悲鳴みたいな声も好き。
もっと聞きたいなぁと思いながら釘を打っていくと段々沈んでいって、硬い外側の感触じゃなくて柔らかい感触がした。釘なんかじゃなくて自分の指を突っ込んで中を掻き回したい衝動に駆られたけど背後から睨んでくる人がいるから自重した。
また悲鳴を上げてくれないかなぁと釘を思い切り中に入れたらぐちゃりと粘性のある音がした。
「ぃだっ、…い゛だぁ…」
まだ感情を口に出す余裕があるなんて意外。涙を浮かべて請うように見上げてくる姿がとても可愛らしい。あまりに可愛いので笑ったら厭そうな顔をされた。
ぐりぐりと悲鳴を愉しみながら掻き回していくと、縁に削れたのか穴が広がってきた気がする。広がると穴と釘の隙間から赤い血がじわりと出てきて少し驚いた。
人じゃなくても赤いのか。
そろそろバールを入れても大丈夫そうなくらいに広がってきたから釘を抜いたら噴水みたいに血が溢れて、むしろ飲みたいくらいだったんだけどそれは後でも出来るからね。
後ろの工具箱から綺麗に洗ったバールを出したらまた悲鳴が上がった。
「っひぃぃ゛い゛ぃ! や、い゛や、あ、」
いつもの余裕のある声ではなく切羽詰まったような声で拘束された身体を捩らせる様は見ているだけで興奮が押さえきれない。
逸る気持ちを沈めながら開いた穴にバールを入れていく。縁にぶつかって小さい悲鳴を上げるのが可愛いから何回かは意図的にぶつけてみた。
バールの先を肉と皮の間に差し込んで、引き剥がすように思い切り引っ張る。でもあんまりやり過ぎると目にまで被害がいっちゃうからその辺を気を付けつつ。
「いだい、いだ、い゛だい、よ゛」
愛らしい悲鳴を愉しみつつ上に引き上げていくと、段々顔の表面に罅が出来てきた。少し軽くなった気がする。罅が広がっていくと欠片みたいなのがぱらぱらと落ちていった。
力を込めると内側にバールが食い込んだみたいな感触がしたので、あと一息かと思い切り引っ張ったら、ぴし、と音がした。
「あ゛っ、あ、あ、あ゛あ゛ぁぁああ!」
一際大きな悲鳴が聞こえて後はバールを抜くだけでばりばりと剥がれていく。外側がどんなに硬くても中から壊してしまえばこんなに簡単なのに。今まで何をしていたんだろう。
ぎりぎり音がしたから音の方を見てみると手を縛っていたリボンが音を立てていたらしい。
ピンクのリボンと口を彩る真っ赤な色彩がベストマッチです。乾いちゃうの嫌だなぁ今の瞬間を写真に収めてみませんかなんて。


=======

モブ視点
下にまた会話



「これはつまりハメ撮りフラグ」
「そんなフラグ存在しない!」
「え、何でキレんの」
「何でもないし、キレてないし」
「〜し、って若い子とかよく使うよね」
「俺を若者と一緒にするな!」

=======

場面が一緒でも会話は違うっていう


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -