じぃ、と黒板の前で自分の学生時代について熱弁する先生を眺める。
一瞬目が合った気がして恥ずかしくなって目を伏せた。目が合わなかったにしろ視界に入っていた生徒がいきなり動いたのだから気にしてはくれないだろうかとは思ったけど先生は自分を教師に導いてくれた恩師の話を続けていた。
うん。感謝はしてます。先生の先生がいなかったら私は先生に会えなかったんだから。

「先生が好きー」
「好きー!」
友達の家で、二人で叫んでみる。隣から壁を叩かれた。うるさくしてすみません。
「ああ先生先生何であんな可愛いの先生奥さんも可愛いっていうから可愛い家族じゃないの混ざりたい養ってもらいたい」
よくはっきりしないな、と言われる。はっきりしないんじゃなくて好きな人の全部をあいしてるだけ。それに先生が選んで十数年添い続けている人なんだから悪い人の訳がない。
「あのねー、あたし、センセイのメアドしってるよー」
友達がへらへら笑いながら私の目の前で携帯を揺らす。
何で、どうして、どこのルートからとってきたの。聞きたいことも気になることもいっぱいあるけどとりあえず。
「私にもアドレス教えて下さい!」
土下座する勢いで言うと、「じゃああとで送っておくねー」と返ってきたので、家に帰って待っていたらすぐに届いた。
この件は内密に。だそうです。了解了解。
感動しながらアドレスを登録して、電話帳を見る。先生の名前が載っているというそれだけで興奮して叫んだらうるさいって言われた。うぅ、本日二度目。

最初は登録してあるってだけで幸せ。でも人間欲が出るってもので、登録するだけじゃなくってメールを送ってみたくなるんだけど、用事もないのに送るなんて変だよねとかそもそもアドレス教えてない人からメール来たら気持ち悪いよねとか思うと、メール作成画面で動けなくなってしまう。
私だって気付かれるのが嫌。私だって気付いて欲しい。
そんな乙女さながらの気持ち悪い思考に陥って我ながら鳥肌が立った。
ああ、そうだ。
先生に気付いてもらえそうで気付いてもらえなさそうな内容にすればいいんじゃないか。と思い至った。

×組の××番の人です^^

これでいいか、な?気付いてくれたら嬉しい。気付いてもらえなかったら私がややこしいメールを送った所為。
そう決めつけて、送信ボタンに手を伸ばす。
あれ、これでいいのか。本当にこれでいいのか私。
うんうん唸っていたら五分経っていた。もうどうにもなるまい。携帯から目を離して指を遊ばせる。ふと見たら画面には送信しましたの文字。
…あーあ送っちゃった。なんてね。
明日が楽しみ、かも。



title/火のないところに煙をたたせよ


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