「あ、」
「委員長!」
今は放課後。で、更に言うならあの同じ事を繰り返すだけの無駄に長い委員会が終わった後。つまりは日はとっくに暮れている。
のに、昇降口の傘立てに一人ぽつんと座っていたのは何故か私に懐いてくる女生徒。そんなところに座るなって言っても無駄と見た。
「何、まだ学校にいたの、早く帰りなさい」
「うん? 帰るよ。委員長来たからね」
立ち上がってスカートを手で叩く。
うん?何か、彼女は私が来るのを待っていたと?終礼からどれだけ時間が経ったと思ってるの。
「…ん」
「へ?」
手を差し出したらきょとんとした顔をされる。いつもは嫌がっても勝手に繋いでくるのに、人が動いた場合の耐性がないらしい。
「…あ、や、別に、何でも。早く帰ろ」
急に恥ずかしくなって手を下ろしてさっさと歩く。
「あっ! 待ってよ委員長! 今デレたんだよね!? 気付かなくてごめんね! ね、ほら、もう一回!」
もう一回、と言って手を差し出してくる。だから、それに手を重ねようとした。


「わ…わ、わ、」
荷物が重い。いや、自分から持つって言ったんだけど。でもやっぱり普段から運動もしないでぐだぐだしてたらそれは体力もなくなるだろう。
「あ、大丈夫? そこに椅子あるよ、少し休む?」
道の端に屋根付きの休憩所みたいなところがあった。いつもはあそこで将棋打ってるおじいさんがいたんだけど今日はいないからおじいさんの代わりに、ってのも変だけどまぁ、おじいさんの定位置に腰掛けた。
「ごめんね、買い物、付き合わせて」
「いや、僕も、あの、恋人がいるのに、すみません」
そう、恋人。恋人と言うより彼女にぶら下がって生きているロクデナシがいる。なんで彼女が彼の世話をしているのか気になって仕方ない。僕ならまともな暮らしを提供することができるのに。
もしかしたら彼女はあの男に脅されているのかもしれない。
僕が助けてあげなきゃ。あげるっておかしいよね。僕が助けた気になって自己満足したいだけだ。
「あのっ…」
自己満足だろうと、この気持ちに嘘はない、と伝えようとした。


会長の側室に昇進しました。果たして一国民でいるのと取り巻きになるのと、どっちがマシなんだろうね。
今いるのは生徒会室。何故かまたしても側近も側室も置いていない。すぐ終わるから、って帰させたらしい。さすがこの国を纏めあげる王様。その程度の配慮が出来なきゃ駄目ってことか。
じゃあ何で俺は此処にいるんだろうか。暗くなり始めた空を見上げて溜息を吐く。
「かーいちょーぅ、そろそろ飽きたんですけどー」
書類とにらめっこする会長に背後から近付く。
こっそり近付いたつもりだったのにペンで額を叩かれた。さすが会長。反射神経が並じゃないな。そんなところもすき!とか言うべきか。
「終わったら相手してあげるから」
と、猫の子をあやすみたいに喉の下を擽られる。みたいであって俺は猫じゃないです。
擽ったいので後ろに跳ねるように後退したらくすくす笑われた。うぐぐ会長め。眼鏡似合ってるとか思ってないんだからなー!
再び書類に向き直った会長に懲りずにまた忍び寄る。


家に帰ってドアを開ければ何かいい匂い。今日の夕飯何かな、と鼻を動かす。
靴を脱いでいるとぱたぱたと音がした。
「おかえりなさい」
柔らかい声がして、声のする方を向くと声の印象をそのままそっくり写したかのような柔らかい笑顔の、嫁。
そう、嫁なのだ。男だというのに。何で女の子に生まれなかったのか、ってそんなの本人が一番思ってるんだろうから言わないでおく。
あれ、なんか笑顔少し硬いな。
「あのっ…、まだ、お夕飯…出来てなくて……、」
そう言うと気まずそうに俯いた。そんな事でいちいち落ち込まなくていいのに。
「分かった、じゃあ今日は風呂が先だな」
俯く嫁の頭に手を置いてがしがしと動かす。
じゃあ風呂に、と方向を変えて風呂場に行こうとした。
「っあ、あの…!」
まだ何かあるんだろうか。まさか風呂まで沸いてないとか。そんな馬鹿な。じゃあさっきから匂ってくるこの入浴剤の匂いはなんだ。
とりあえず返事をしようと振り向いた。



手を伸ばした。
思いを伝えようとした。
肩に触れようとした。
振り返ろうとした。


だけなのに。



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続かない
しいていうならアクション的なのが書きたかったけどまともに戦えそうなのがいなかったって気付いた。

因みに
(会話文)下着

この心をくれてやる

平伏すなら貴方の下がいい

君とのささやかな蜜月
の順


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