綿を丸くして白い布を被せて紐で縛って顔を書く。紐に別の紐を通してつるしてはい完成。
「晴れたらいいね」
後ろを振り返るとクラスメイトの女の子が二人。部屋の端の方に座っている。
もう、いつもは嫌がっても自己主張してくるのにこういう時だけ大人しくなるの。何でかなぁ。
あ、
「布が足りない」
またてるてる坊主を作ろうとしたら布があんまり無かった。じゃあこの布で小さいの作ろうかな。
買ってくるね、と言い残して財布を持って部屋から出て行く。

どうだろう。布はこれでいいけど、紐と綿は必要かな。それの残りも見てから来れば良かった。
まあいいか。無かったら困るけど合って困ることもないもんね。でも綿はいらないかな。手に持っていた綿を棚に戻す。
会計を済ませて外を見たらまだまだ雨がざあざあ降ってて、この中を帰らなきゃいけないのかと思うと溜息が出る。

「ただいまぁ」
傘をさしたっていうのに殆ど全身ずぶ濡れで、濡れてないところなんて首から上くらいだ。でも布と紐は死守したけど。
袋から買った物を出して二人の前に広げてみせる。
「ねぇほらこの布、大きいよね、すごいてるてる坊主が作れそう」
サイズ合わせなきゃ、と鋏をと布を持って一人の方に近付く。
「っぃ、いやぁぁぁああっ!」
さっきまで大人しかったのにいきなり叫ぶから何事かと思ったじゃない、人騒がせな。まぁ多少うるさくなるだろうなとは思ってたけどここまでとは思わなかった。
「ねぇねぇ、少し、黙って? 集中できない」
確かこの変だったよね?と何となくで首の辺りを軽く切る。声帯があるのって喉だったよね多分。違ったら痛い思いさせてごめん。
一瞬うるさかったけどすぐに静かになった。でも布が汚れちゃった。仕方ない、洗ってこようか。
布を持って部屋を出る。出る前に「布、洗ってくるね?」ってもう一人に声をかけたんだけど何も答えなかった。静かなのはいいけど返事くらいしてくれたっていいのに。
少し頬を膨らましながら洗濯機に布を放って漂白剤でろでろ。蓋を閉じてスイッチ入れてごうんごうん。回るの見てると落ち着くっていうよね。ごうんごうんごうん…。

「っは、」
少し寝てた?寝てたかな分かんない。気付いたら布も綺麗になってたから少し上機嫌に部屋に行く。

「う、やだ、くさぁい」
ぎゅ、と布を持ってない方の手で鼻をつまむ。
部屋に入った途端に鉄の匂いと何だろうこれ、アンモニア?アンモニアって水に溶けやすかった気がする。いやそれより換気だ臭くてかなわない。
がらりと窓を開け放つ。じめっとした空気が入ってくる。更に言うなら鉄とアンモニアに雨の匂いが混ざった。これは悪化ですか。
ああそうだてるてる坊主作らなきゃ。床に倒れてる一人を起こして首に布を巻き付ける。そのまま巻いたら布が汚れるからもう汚れてて何にも使わない布を再利用。その上に布を巻いて紐で結んで、後はつるすだけ。
が、結構重労働。これを後一人分とか大変だなぁ。でも仕方ない。二人が晴れにしてくれって頼んできたんだから。
「ねぇ、どうかなぁ、晴れると思う?」
まだ放置してたアンモニア臭の発生源。に聞いてみる。さっきまで転がってたのに今は起き上がって顔を青くして全身を震わせている。
「…っ、知らないっ、知らない知らない知らないッ!」
また大声を出してほら静かにしてよ窓開いてるんだよ?他の人に聞かれちゃう。
また布が汚れたら困るから今度は無視して布を巻き付けた。巻いてる最中に足で蹴ってくるのはどうにかならないの?別に力入ってないからそうでもないけど。
布を巻いた上に紐を巻き付ける。巻いてる最中に何か蛙が潰れたみたいな声がして静かになった。
さあ後はつるすだけ。なんだけど、つるすときはあの縛った手首の紐は解いた方がいいのかな、まあいいか。どうせ布で見えないし。

首の紐に別の紐で結んでつるして、うん、立派なてるてる坊主だ。
これで晴れたらきっと二人も幸せだよね。
部屋が白い布で埋め尽くされてて凄く幻想的じゃない?
外国の映画でよく見るたくさんの白いシーツに囲まれてるみたいで気分は晴れなんだけど、窓の外は雨。

「明日天気になぁれ」


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