家の前について一呼吸。
窓を見れば明かりが付いてて、こころなしかいい匂いがする気がする。
それだけのことに感動しながら鞄から鍵を出して鍵穴に差し込んで回す。それは今の俺の心中より遙かに軽い音を立てて回った。
鍵を抜いてドアを開ける。さすがに玄関までは明るくなかったけどすぐに明かりが付いて、ぱったぱったと床を蹴る音がした。
廊下とリビングを仕切る扉が開かれてぴょこりと人が現れた。
「おかえりなさい!」
きらきらした笑顔で駆け寄ってくる。またぱたぱたと軽い音がする。エプロンがとても似合っています。
諸君心して聞いて下さい。目の前で俺にこの愛らしい笑顔を惜しむことなくさらけ出しているそこらの女より遙かに可愛い彼は、俺の嫁なんですよ!
抱きしめたい衝動を押さえて何とか、ただいま、と告げる。
「あのっ、ご飯とお風呂、どっち先に…」
「あぁ、じゃあお前食べる」
ありきたりですか仕方ないと思うんだだってこんな可愛い子が俺の嫁なんだよしかもなんかにこにこしてるんだよ駄目じゃん男はみんな狼なんだよウルフなんだよ!なのに据え膳ですと言わんばかりに可愛い笑顔撒き散らかされたら誰だって…
「…っ、う、ぁう…」
冗談で言っただけなんだけど。顔真っ赤にしてあたふたしだす。そんな様子も大変愛らしい。うん。今発情しろって言われたら一秒でできる。冗談じゃ済ませられない自信あるね。

「…だ、だめです。お夕飯冷めちゃいますよ」

にっこり笑う素敵な笑顔を見た気がした。しただけだが、多分笑っていたんだろう。残念ながらこの目にその素敵な笑顔を映すことは叶わなかった。
言葉と共に視界に入った肌色の物体が凄い早さで轟音を轟かせながら俺の頬にめり込んでいった。そんな訳で可愛い嫁の強烈な愛のパンチによって吹っ飛ばされた俺は壁に顔を埋めているからよくは見えない。
最後に聞こえたのは、「夕飯、あと並べるだけなので早く来て下さいね」という言葉である。
壁から顔を引き剥がすと見事な顔型ができていた。ああまた修理費出ていくのかなぁと考えながら可愛くて最強な嫁の元へふらふら歩いていった。



title/青色2号


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