Dabihの放った弾はRigelに届くことはなかった。しかし、Rigelの体はがくんと崩れ裏路地の汚い道にぶつかる直前で緑の短髪の男によって担がれた。どうやらRigelはこの男によって気絶させられたらしい。緑の短髪はよいしょとrigelを担ぎ直すとCastorとDabihを見てにやりと笑った。

「チッ」

余裕の男の笑顔にDabihは悔しそうに舌打ちして銃を再び構える。

「Dabih、女の子なんだから舌打ちはやめなさい。それと、私、一発って言った。」

Dabihに反してCastorは男と同じように余裕の笑顔でDabihに銃を仕舞わせた。

「じゃ、この続きはまた今度、ということで。」

それを見た男は余裕の笑みのままそう言ってRigelを抱えていない方の手をポケットに入れて二人に背を向けた。

「私、戦闘は嫌いだから今度はうちのダーリンがお相手でいいかな?」

その背にCastorが軽い調子で返事すると緑の短髪の男は背を向けたまま「誰でも」と笑い混じりに返した。


「いいんですか?」

不満そうに問うDabihにCastorは「いいの」と返す。

「今日の占いは敵を逃がすと吉って出たし。」

ふふふと笑うCastorにDabihはため息で返す。そうだったCastorという女はいつもこうだ。生真面目な人を苛立たせる天才みたいなものでDabihをいつも苛々させる。戦えるのに戦わないし、危険を楽しんでいるようだ。なのにいつでも彼女はあらゆることを正しく見通すのだ。



Dabihの銃に一発しか弾が残っていないことも、
Dabihが換えの弾倉をアジトに置いて来てしまったことも

全部彼女は知っているのだ。


そして、彼女のZodiacの占い師Castorの占いはよく当たるのだ。



「さぁ、Dabih帰ろう。Ariesが待ってる。」

「はい。」

「ScopioもきっとDabihのこと心配してる。」

「そんなことは・・・」

裏路地は日が昇りきってもやっぱり薄暗くて、臭くて、べろべろに酔った輩がうろついていて、彼女たちには不釣合いすぎる。

「それより、Aquariusは?」

「ああ、あの子はあの酒場の二階で部品の取引してるからまだ帰らないわよ。」

「そうですか。」

「あーあ、もう朝かぁ。今日の朝ごはんどうしよう。」

「生クリームホットケーキはいかがですか?」

「生クリーム?甘いものはAriesが拗ねるから却下。」

裏路地を抜ければ表の人々が起き出した清清しい商店街だ。

裏路地を抜ければ彼女たちは少女であり主婦なのだ。


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