Ariesに指示されたのはもう朝だというのに薄暗い裏路地の酒場だった。Dabihはべろべろに酔った輩にぶつからないよう歩く。ほんのりと香る下品な酒の匂いがスーツについていないか袖を確認した。ふと顔をあげると丁度目的地の酒場のドアが開き見知った顔が出てくる。酔っているのか覚束ない足取りのCastorをAquariusが支えながら出てきたのだ。

「ぬぬ?Dabihだ!」

「ほんとだ」

2人はDabihに気づくとにっこりと笑う。

「…迎えに来ました。」

「Aries?」

「はい。それよりCastor、任務中に飲酒とはどういうことですか?Aquarius、あなたは今日、任務がなかったはずでしょう?」

厳しい顔で静かに注意するDabihを気にすることなく2人は帰路につく。

「2人とも聞いてるんですか?」

「聞いてる聞いてる。」

「ごめんちゃい」

へらへらと笑いながら先を行く2人に苛々を募らせながらDabihは後を追う。人のまばらな裏路地をふらりふらりと歩くCastorがふいにDabihに振り返りコードネームを呼んだ。

「・・・なんでしょう。」

苛々しているからといって無視は出来ないのでしぶしぶと返事をしたDabihに向かってCastorはにこっと笑いかける。

「Dabih、今、ハジキは持ってる?」

「ハジキ・・・銃ですか?持っていますよ、任務帰りなので。どうしてだすか?」

なんでこんなことを聞くのか理解出来ず顔をしかめるDabihにCastorは大きな声で答えをくれた。

「だって、私、戦闘したくないのにこの裏路地物騒だもん、偽者とかが出るし。」

「偽者?」

Castorの言葉に更にDabihの眉間は皺を深く刻む。

「ね?Rigelさんで合ってたかしら?」

Castorはいつもの笑顔を崩さぬまま隣を歩くAquariusの顎に長い爪を食い込ませた。すると顔が剥げAquariusはげげっと低く唸りながら別人になった。それはDabihも一度写真で見たことがある顔で敵対勢力FMSの一員だった。顔を見るなりDabihは銃を取り出し構えた。

「Castor、何発撃ってもいいですか?」

静かな声でCastorに許可を仰ぐと短く、一発と返ってくる。

「ひえ!?マジで?勘弁してくれぇ」

情けなく叫ぶ的の足に弾を一発放った。




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