「右目、見えないんだって?」
Lupusの手を握ったままのCastorが呟くのと同時にCastorの額に銃口が当てられる。
「そういえば貴女も情報屋だったわね。」
「んー私は情報収集担当、かな?」
「じゃあ、情報収集担当さん。猫ごっこはもうやめたのね?」
その言葉を合図とでも言うようにCastorは机に飛び乗り額に当てられていた銃を持つ手も掴んだ。しかし、突然の出来事であったのにLupusの表情は動かない。
「ふふ、本当に何でも知ってるのね。」
「以前頼まれて調べたまで、貴女に興味はないから安心して。」
「私はLupusに興味津々なんだけど。」
「それより、女に両手掴まれても嬉しくないから離して下さらないかしら?」
Lupusはまともに取り合うことなく笑顔のままのCastorを相手に拘束された両手の解放を口にする。机の上に立てひざを付く女とその女に両手を掴まれる女。なんともシュールな光景だが張り詰めた空気は変わらない。
「失礼。」
Castorは手を挙げるように離す。Lupusははぁ、ため息をついて銃を仕舞うと今度こそ部屋を出るためにCastorに背を向けた。
「噂以上のようね。Lupusが敵じゃなくて本当に良かった。」
背中に掛けられた声にLupusが振り返るとまだ机の上にしゃがんでいるCastorがにやにやという風に笑っていた。それに返事することなくLupusはドアに手を掛ける。
「До новой встречи.(またお目にかかりましょうね。)」
「なんだ、ロシア語も話せるみたいね。情報に足しとくわ。Ну, пока.(じゃあ、また。)」
今度は振り返ることなく返事をしてLupusは静かに扉を閉めた。
意地が悪いようで(嘘つきの女二人でにらめっこ)
→あとがきとおまけ的な何か
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