Ariesから聞きたいことがあると言われたのでAriesの部屋に来たLupusは自ら開いた扉を思わず閉めそうになった。その気持ちをぐっと抑え部屋に居た予想外の人物に声掛けた。

「なんで貴女がここに居るのかしら?」

「あらら、Lupusが会いに来てくれるなんて珍しいね。」

しかし、声を掛けられた人物―Castorはへらりと笑うとLupusの問いかけとは関係ない言葉を返した。完全に問いかけを無視されたLupusは日本語は通じなかったかしらと笑いながら部屋に入った。黒革の手袋で包んだ手指を組んだ上に顎を乗せ笑うCastorの向かいに腰掛けた。

「Извините.Вы понимаете по-русски?(失礼しましたわ。ロシア語なら分かるかしら?)」

「意地悪いのね、私が日本語とフランス語しか使えないの知ってるでしょう?」

「なら、ちゃんと私の質問に答えて欲しいものね。」

ごめんごめんと言うもCastorには少しも悪びれた様子はない。二人の笑顔とは対照的に部屋の空気はひんやりとしている。

「Ariesは急用が出来て出かけたから代わりに貴女を待ってたの。」

「そう。じゃあ、帰るわ。」

少し間を空けた後のCastorの答えを聞き、Lupusは無駄なことをしたと言いたげな表情で立ち上がった。その手を机に身を乗り出す形でCastorが掴んだ。

「まぁ、そう急がずに。ちょっとお話しましょうよ。」

「生憎、私は貴女に話すことなんてないわ。」

それでもCastorは手を離そうとしない。

愛想のいい笑みも二人の間では冷気を発するばかりだ。





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