Betelgeuseは黒ふちの眼鏡を中指で押し上げにやりと笑う。楽しくて仕方ないそんな顔だ。
「よっと」
次の瞬間ぐっと近づいた距離にAriesは無表情で応える。
「逃げねぇの?」
「逃がしてくれないだろ?」
「まぁな。」
続いて鋭い音を立ててナイフが降ろ下りる。それをAriesは少し顔を傾けることでかわす。今ではもうしっかりお互いの顔が見える距離で二人のふざけあいは続く。
「そういえばうちの情報担当が言ってたんだけどさ。」
「どうせくだらないことだろ?」
「それがさ、結構おもしろいんだわ。」
聞くよな?そう言ったBetelgeuseはAriesの顔の横に突き刺したナイフをガリリと乱暴に捻った。
「お宅の奥さん、Castorだっけか?あの"白猫"なんだな。」
Betelgeuseの言葉を聞いたAriesは眉間に皺を寄せた後、己の腕に抱えたターゲットを思い切り上に投げた。
「っ!?」
予想外の行動にBetelgeuseが上に視線を移すと、自らの相棒が相手をしているはずのPiscesが塀の上でAriesの放ったターゲットを見事キャッチしていた。
「Pisces、縄くれ。」
「はいっ」
「げげ・・・」
Piscesが太い縄をAriesに下ろし、Ariesはそれに手をかけた。そして二人の一連の行動に落胆の声を出すBetelgeuseの肩を叩いてAriesも塀の上に登った。Ariesは登りきったところで下を向いて声を掛ける。
「あいつはもう"白猫"じゃない。」
そして未だ塀の下塀にナイフを突き立てたままおもしろくなさそうな顔をするBetelgeuseを見下ろしその場を去った。
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