怪しく笑うDabihはよしよしと短機関銃を撫でる。その目は常人のものではない。
「この子、最近連れて出せてやれてなかったんです。」
にっこりと瞳に狂気をたたえたDabihの細い指がすっと引き金に圧を加える。そしてダダダダダと音がして弾が散る。
「ひっ」
しかし、最後の男は生きていた。目を閉じていた最後の男が目を開くとDabihの短機関銃の銃口は上を向いていた。
「Dabih」
銃口を上に向ける手の持ち主が落ち着いた声で銃を持つ女の名前を呼ぶ。
「ご、主人、様。」
我に返ったDabihは途切れ途切れに自分の銃を握る人物を呼ぶ。
「落ち着け、人を殺したらいけないと言ったはずだ。」
「・・・申し訳ございません。」
「あと俺はご主人様ではないScopioだ。」
「・・・はい。」
Scopioが短機関銃から手を離すとDabihは深く頭を下げる。頭を下げたまま小さく震え始めたDabihをScopioが抱きしめる。
「わ、私はまた・・・」
「お前は優秀だ。安心しろ、俺はお前を捨てない。」
「・・・ご主人様」
ScopioはそのままDabihを片手で抱き上げると腰を抜かし座り込む最後の男を一瞥する。
「お前、何か見たか?」
威圧的なその言葉に男はガチガチと歯を鳴らしながらブンブンと顔を横に振る。
「み、みて、見ていません。」
男の返事を聞いてScopioは館を後にする。
スーツの袖からのぞく真っ白の手で黒光りする短機関銃を握りScopioに縋り泣く少女を抱いて。
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