「な、なんだ!これは!授業で習ってないよね!?」
「だから、授業で習ってないものは課題に出ないぞ?」
この世の終わりみたいな顔でシャーペンを握り、課題のプリントを見つめる名前が大きな声で叫んだ。ちなみにこの会話、今日3回目だ。
「ううー分かんない・・・錫也教えて下さい。」
「えっと、これは教科書を参照してだな・・・」
涙を目に溜めながら俺を見る名前にドキドキと鳴る胸を押さえ、教科書をめくりながら解説する。しかし、途中から苗字は俺の手元ではなく顔を凝視しているようだ。
「名前?」
「ん?何?」
「俺の話聞いてる?」
伺うようにそう聞けば、名前は当たり前だと言うように聞いてない!!と胸を張る。
「錫也の顔見てた!かっこいいなーって思って!」
「名前・・・」
にこにこと笑う名前に他意がないだろうことは知っているがやはり、かっこいいなどと言われれば少し、ほんの少し期待はしてしまう。名前はもちろん俺もまだ課題はまだ残っているこの状況でうるさくなる胸の音。
誤魔化すように俺は笑って名前に課題のプリントに意識を戻させる。
「ええ、もう無理、出来ない。」
駄々を捏ねる名前を励ますように撫でてやればおずおずといった様子で名前はシャーペンを握った。
手伝ってやるからもう少し頑張れよ
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