「ちょっと、待ってください。」

キスしようとしたまさにその瞬間、颯斗が小さく呟いて私の肩を押す。

「・・・どうかした?」

わけがわかんなくて颯斗がそらした視線を合わせるように顔を覗き込めば更に顔を背けられた。正直、これはショックだ。

「わ、私とキスするの、いや?」

嫌だ、と言われたときの反応はまだ決めていないけれど聞かなければ不安で不安で仕方ない。他に理由があるならそれが聞きたい、そう思った。

「そういうわけではないんです。」

颯斗特有の敬語がなんだか冷たく聞こえて(多分そんなことはないんだろうけど)目が潤んだ。

「じゃあ、どういうわけ?言ってくれなきゃわかんないよ。」

「名前さん」

震えた声に反応したのか颯斗の視線と私の視線が絡んだ。優しく私の名前を呼ぶ颯斗の声も震えていた。

「私、すっごく颯斗が好きで、颯斗とキスだってしたいのに。」

ものすごく恥ずかしいことを言った気がするがよからぬ想像でいっぱいの私の頭はそんなこと気にしていなかった。

「名前さん・・・」

もう一度呼ばれた名前のあと、颯斗が笑う。笑ってすらっとした手を私の頬に当てた。

「僕も名前さんがすっごく好きです。」

「颯斗・・・」

「わけ、聞きたいですか?」

「うん。」

繋がりが見えず弾むように進む言葉に私は首を縦にふる。

すると颯斗は色っぽくふふふと笑う。そして、これまた色っぽい声で言う。

「教えてあげますけど、絶対受け止めてくださいね?」




(貴女のキスを待つ顔に欲情しました、だから)

泣くのは明日にしてください

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