きみがすき

 
はっと目を覚ますとベッドの上だった。しかも横には錫也先輩が心配そうな顔で座っていた。時計を見るともう集合時間をとっくに過ぎている。

「大丈夫か?」

「大丈夫、です。」

上半身を起こすと錫也先輩に撫でられた。思えばこの行動で錫也先輩に恋したんだろうな。だけど気まずい。気まずいぞこれ。どうしてだ?



どうしてだ?じゃないよ!私、錫也先輩に告白されたんだ。悠長に寝てた私のばかぁぁあぁぁぁああああ!

どうしたらいいのか分からないからとりあえずベッドの上に正座して錫也先輩に向き合う。

「あの」

「ん?」

「さっきの」

「俺が椿のことが好きって」


ドキドキしながら話し掛けたらあまりに恥かしい返答で思わず錫也先輩の口を手で押さえてしまった。

「あ、すみません。」

「はは、いいよ。」

こんなときにさえも錫也先輩は笑顔にときめいてしまう。

「私、周りの人によく表情がないって言われちゃうくらい感情表現が苦手ですよ。」

静かな保健室。気まずげな空気にまぎれるような小さな声で私は口にした。あれ?何言ってんだ自分。

「でも俺は椿が楽しいときの顔も困ってるときの顔も知ってる。確かに少しだけどちゃんと表現出来てるよ。」

「私、喋るのも苦手です。」

「俺、自慢じゃないけど聞き上手なんだ。」


だから何言ってんだ自分。何をさらけ出してるんだ。嫌われるかもしれないのに。この人には嫌われたくないのに。


「私、身長171もあるんですよ。」

「俺179あるからいい感じの身長差だな。」

「可愛くないし。」

「いつでも椿は可愛いよ。」


錫也先輩がいつの間にか流れてた涙を拭ってくれた。

「その表情。俺以外に見せて欲しくないな。」

「私を泣かせたの錫也先輩が始めてです。」


なんか嬉しいなとくすくす笑う錫也先輩はやはりすごい人だ。私は恐る恐る錫也先輩に腕を伸ばし抱きしめた。初めての行動で多分すごくぎこちない。






「私、も錫也先輩が好きです。」

錫也先輩の肩に顔を押し付けて見えなくする。早まる鼓動に動揺する。

「ありがとう。俺も椿が好きだよ。」


私の頭を撫でる手は男の人のものだった。そして錫也先輩はまた耳元で今度は優しく囁く。


「大事にしてやるからな。」


伝わりにくいこの胸のうちも感情も錫也先輩にだけ分かってもらえたらいい。嫌いなこの高い背も錫也先輩より低いならいい。可愛くない見た目も錫也先輩が可愛いと言ってくれるなら少し自信が持てる気がする。だから

「よろしくお願いします。」


私の頭を撫でてくれるのは貴方だけだから。










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