私を隠して欲しい

 
さすがともいうべきか。なんでも出来る錫也先輩は運動神経もいいのか。

「捕まえた。」

そう言って伸ばされた手から逃げるため私はついさっきの梓の言葉を無視してまた足を動かし始める。

「え?あ、ちょっと!」

空を切った手の持ち主もまたも私を追いかけ始める。

「椿!待てよ!」

「待ちません。」

結構なスピードで廊下を行きながらたくさんの視線を感じる。階段を二つ登って右に曲がったとき見覚えのあるのっぽとぱっつんを発見した。

「梓!天羽くん!」

「「椿!?」」

名前を呼びながら走り寄れば天羽くんに走ってるときも真顔とか怖い!と言われた。怖くていいから今は錫也先輩から助けて欲しい。

「天羽くん背中貸して。」

「ぬわー!怖いお兄さん!!」

天羽くんの背中を掴み私と錫也先輩の間に天羽くんが来るようにして止まった。(出来れば梓の後ろに隠れたかったが梓では身長が足りない。)

「天羽君、退いてくれないかな?俺、椿と話したいんだ。」

「天羽くん、退いたらだめ。」


ジリジリと寄ってくる錫也先輩に対して私は天羽くんを引きずるようにジリジリと下がる。

「椿、何してるの?翼が泣きそうなんだけど。」

「梓、錫也先輩にお帰り頂けるようお願いして。」

「は?なんで僕が。自分でしなよ。」

「木ノ瀬君じゃなくて俺と話しような?」


錫也先輩の優しいながらどこか威圧感のある口調に天羽くんと私はおろかまさかの梓まで黙ってしまう。

「椿、出ておいで。」

「いや、です。」

天羽くんが泣きそうな声で離してくれぇと漏らす。だが断る。その気持ちを込めて更に強く天羽くんの背中に掴まりぴったりくっついた。











(恥かしすぎて顔もみれない。)





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