漏れた本音

 
ちょちょちょちょっと待て自分。今なんて言った?今なんて言った私ぃぃい!!!

「椿…」

「すみません!冗談です。錫也先輩が冗談言うので冗談で返してみました!忘れて下さい!」

ついうっかり本音を漏らしてしまった。というか期待して下さいっていう自分の発言で今気付いたけど、私、私、錫也先輩が恋愛対象として好きみたいだ。ぽかんとした顔の錫也先輩を見て言った言葉の意味とか自分の気持ちとかに対する恥かしさからさぁっと血の気が引いた。乱暴にならないように何気なく繋いだ手を解いて立ち上がりながら異様に大きな声で言い訳を叫んで逃げた。後ろで呼ぶ錫也先輩の声は聞こえないふりで走った。足の速さには少々自信があるので多分追いつかれない。屋上庭園から出たところでスピードは落とさずポケットから携帯を出す。梓から何件か着信があったようだ。迷わずリダイヤルを押す。

『椿!探してたんだよ。今どこ?』

ワンコールで出た幼馴染みの声にほっとしつつもスピードは下げない。

「梓、助けて。恥かしい錫也先輩に私好きだったみたい錫也先輩やだもう泣きたい。」

『ちょっと落ち着きなよ。意味分かんないよ。』

梓のため息にはっと我に帰って立ち止まる。

「あ、ごめん…」

『まぁいつものことだし。で、どこに居るの?』


と聞かれても冷静になって辺りを見回すとそれはもう知らない場所なわけで。

「…分かんない…」

『…毎回毎回バカなの?探すからそこ動かないで。』

低い声で私に暴言を吐いて通話はぶつりと切れた。また迷子とか情けない。しょうがないから梓が迎えに来てくれるまで立っておこう。と決めたときだった。


「…ちょ、足、本当速い、な…」


息が上がった聞き覚えのある声に私は恐る恐る振り返る。












(!!!)



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