先輩からのお願い

 
あの後、東月先輩にお礼を言ってから急いで夜久先輩と七海先輩の待つ中庭まで行った。東月先輩の携帯には七海先輩から『まだか?』『はらへった』『くうぞ』『食った』『まじで食うぞ?』とメールが入っていて二人で見て笑った。


「錫也ー堺ー!おせぇぞ!」

「私と哉太もう食べ終わっちゃったよー」

中庭のベンチに二人は座っていてその横に半分ほど空になった重箱が置かれている。

「ごめん、ちょっと色々あってな。」

「すみません。私の用事に付き合わせちゃってたんです。」

「まぁいいけどよ。」

「早く食べなきゃ昼休み終わっちゃうよ?」


夜久先輩がさぁと割り箸と取り皿を差し出してくれ、その上に東月先輩がおかずやらおにぎりやらを乗っけてくれた。お母さんみたいだ。

「さぁ召し上がれ。」

「錫也の料理はおいしいんだよー」

「東月先輩が作ったんですか?ありがたくいただきます。」

「はい、どうぞ。」

ニコニコしながら私を見る東月先輩と夜久先輩の間で玉子焼きを口に入れた。なんだこれ!?すごくおいしい!多分私の作る玉子焼きよりおいしい。

「おいしいです。」

感想を言えば東月先輩は本当に嬉しそうに良かった、と笑う。









梓と仲直りをし、東月先輩の料理をめ一杯堪能させてもらい心もお腹も幸せになったところで予鈴がなった。そろそろ帰ろうということで夜久先輩と七海先輩の後ろを付いて行くように私と東月先輩が歩く形になった。

「今日はたくさんありがとうございました。梓とのことも、お昼ご飯も。」

「木ノ瀬君とのことは椿ちゃんが自分で解決しただろ?昼ご飯は気に入ってもらえたなら光栄です。また作ってやるからな。」

「東月先輩、」

「ちょっと待った。」

私が次の言葉を言おうとしたら東月先輩に遮られた。

「なぁ、東月先輩じゃなくて錫也って呼んでくれないか?」

しし下の名前だと?!

「で、でも」

「椿ちゃんには名前で呼ばれたいんだ。俺も椿ちゃんのこと椿って呼びたいしさ。」

先輩の有無を言わせないような笑顔に私は素直に頷いた。

「錫也、先輩。」

「よくできました。椿。」

錫也先輩と呼んでみれば先輩も私を呼び捨てにしてよしよしと撫でてくれた。











(ちょっと近くなった気がする。)





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