途中、何人かに捕まったものの私は楽しいことが起こりそうな予感に胸を膨らませて食堂のドアを開けた。
「うわ、いいにおい。」
「星華先輩?」
ドアを開けた瞬間私を包んだいい香りに思わず声を漏らした瞬間、よく知る声が私の名を呼んだ。声の方向を向くと想像通り錫也がエプロンで手を拭きながらこちらに歩いてくるところだった。
「ふふ、錫也副部長エプロンよく似合ってるね。」
「似合ってるって・・・」
茶化すように声を掛ければ錫也は困ったように笑いながらそれは褒め言葉ですか?と続けた。
「うん。それより、錫也部活入ってたんだね。」
「ああ、はい。実は。」
照れたように肯定する錫也、かーわいいなぁとか思っていたら錫也の後ろからこれまた可愛い女の子の声がした。
「錫也ー?どうしたの・・・ってお客さん!?」
「眞緒?」
錫也の後ろからひょっこり現れたのは黒い長髪をポニーテールにした緑の瞳の女の子。どうやら眞緒ちゃんと言うらしい。
「はじめまして、眞緒ちゃん。」
はじめこそ驚いた顔をした眞緒ちゃんだったが私が挨拶をすればすぐににっこりといい笑顔を返してくれた。
「はじめまして、樋口眞緒です。ささ、立ち話もなんですから座ってください。」
更に椅子まで勧めてくれる。可愛い上に気遣いも出来るなんていい子だ。
美人な部長が1年で作った部活。しかも錫也が副部長。
こんなおもしろうそうなことが学園にいたことを知らなかった私は少し損していたのかもしれない。
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