スーパースター[3] 広夢 「痛っっっって!!?」 美緒理 「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 綾 「あ…」 慎一 「迷惑かけてごめんね」 教室中に響いた悲鳴の理由は森先輩が登場してしまったからだった。 先輩の姿を確認して追いかけるように強烈に轟く美緒理の歓喜の悲鳴は、周囲の声すらかき消す勢い。 悲鳴を向けられている森先輩はというと、富田?先輩の頭頂部に見るからに強烈な手刀を振り落し、冷静な口調で一言述べると、お友達である筈の彼の襟をつかんで引き摺るように教室から出て行こうとしている。 広夢 「ちょっ!離せよ!自分で歩くから!」 慎一 「広夢うるさい」 美緒理 「森先輩!!」 綾 「!」 慎一 「…はい?」 美緒理のこんな必死な顔は初めて見たかもしれない。 去ろうとしている先輩の後姿を、今まで聞いたこともないような大きな声で呼び止めた。その声に渋々といった様子で振り向いた森先輩。いったい何を言おうとしているのか。 美緒理 「…あ、あの」 慎一 「…うん」 美緒理 「…えっと」 慎一 「…なに?」 美緒理 「…っ」 慎一 「…」 広夢 「だっから離せっつの!」 慎一 「広夢だまって」 美緒理 「…う…あの」 慎一 「……行ってもいい?」 美緒理 「えっ…あ、待っ」 慎一 「もう授業始まるよ」 美緒理 「〜っ」 綾 「美緒理…?」 美緒理が言葉に詰まってしまって話が先へ進まない。それを察して再び背を向けたスーパースター。 周囲は何が起こるのかと期待しているのか何なのか、先ほどとは打って変わって静まり返っている。 そんな静けさなどお構いなしに、襟からその手を外そうと必死に騒ぎ立てる富田先輩の声と、机や椅子が押しのけられる音と靴底が擦れる音。 アタシまでドキドキしてきた。 まさか…まさかとは思うけどもしかして美緒理は… 美緒理 「森先輩!!!」 慎一 「…」 美緒理 「好き!…です…つ、付き合ってくださ…」 慎一 「…」 広夢 「うお!マジか!また慎に持ってかれたぁぁぁぁっ痛っ!」 慎一 「少し黙ってうるさい」 まさかとは思ったけど、こんな大勢の人が見ている中で告白だなんて。美緒理の本気はここまでのものだったなんて驚いた。 告白された先輩は、困った表情と少々の怒りを含んだ雰囲気で返事に迷っていると言ったところだろうか。 もはや富田先輩がどう騒ごうと、殴られて痛がっていようと、そんなことはどうでもいい。早く美緒理に返事を返してあげてほしい。今にも泣きそうだから。 慎一 「…えー…っと」 美緒理 「!」 慎一 「…ごめんね」 美緒理 「!!」 綾 「みお」 先輩からの返事を聞いた瞬間、顔を抑えて美緒理は走り去ってしまった。制止しようとしたアタシの手は差し出したまま放置されている。 どうしよう…こういう場合、追いかけた方がいいのだろうか。 一瞬そんな迷いも出てしまったけれど、とにかく今この場所に居座るのはなんとも気まずいし、美緒理が泣いているとわかっている以上このままでいいわけがない。 とりあえず先輩二人に会釈をして美緒理を追いかけるべく立ち上がった。 途端に腕を掴まれて反射的に反撃の体勢をとってしまった事に気づいたのは数秒後。 気づくと足元に先輩二人がひっくり返っていた。 慎一 「うそだろ…」 広夢 「?…??」 綾 「ごっ…ごめんなさい」 何か言いかけていた?かもしれないけど、今はそれどころではない。 何が起こったのかという表情の二人にもう一度頭を下げて、急いで教室を飛び出した。 Contents← Novel☆top← Home← |