スーパースター[1]



「長嶺さんは違反しちゃダメでしょ〜?ふはははっ」

「森くんが助けてくれて良かったね〜、てか他の女子に恨まれてるよ〜」

「怖いな〜苛めてやんなよ〜」


ギャハハハッ・・・



 ゴミ捨て場から戻る道のり。すれ違う男子の、アタシを嘲笑う声が廊下に響きわたっている。

 まったく煩いし、いちいち面倒な人たちだ。


(まあ、放っておけばそのうち飽きるでしょ)


 地味で友達の少ないアタシのような人種は特に、こういう好奇の目に晒され、からかわれるものらしい。

 まあ今に始まったことでは無いし、だいたい男子なんてこんなもんだろうと思っているから気にしない。




美緒理
「綾ちゃん、大変だったね。大丈夫?」


 教室に戻ると、廊下の騒ぎを聞きつけたのか、唯一の友達・美緒理が心配そうに待ってくれていた。



「…うん。平気」

美緒理
「すっごい噂になってるよ。綾ちゃんが沼田に捕まったのもそうだけど、森先輩が綾ちゃんの頭撫でてたって事が凄く…」


「…森先輩って?」

美緒理
「え!?知らないの!?」


「?」

美緒理
「みおがいつも騒いでるのに…」


「美緒理の好きな人の事?」

美緒理
「そう!スーパースター!」


「あー…ごめん。美緒理が言うその人かどうかはわからないけど、確かに頭には触られた。でも撫でられたとかじゃないから」

美緒理
「えー!?それでも羨ましいよー!みおも沼田に捕まりたい!」


「いやいや…そこはやめたほうが…」


 スーパースター…なんて呼び方は如何なものかとは思うけれど、さっきのあの人が美緒理の言う先輩なら、人気があるのもわからなくは無い。

 なるほど。森先輩と言うのか…。

 ヒロさんの知り合いと言うことは、もしかしたらアタシの父とも知り合いかもしれない。そうなると、美緒理にはなんだかとても申し訳ない気がするけど。

 絶対に内緒にしなきゃいけない事も、輪をかけて申し訳ない。だって、美緒理にも、学校以外のアタシの姿は秘密なのだから。


 たとえ友達でも、言えない。

 油断すれば必ずそこから綻びる。

 大切な友達だからこそ、余計な責任を負わせるわけにはいかないんだ。



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