ずっと、じっと、ただ何もせずに私を見ているエムさん。なんというか、熱っぽい目といいますか、とにかくそんな目で見つめられたら私、
「勃ってしまいます」
「……なんで…」
…なぜ?理由ですか?
「そんなのエムさんが」
「ズルいじゃないそんなの!」
「?!」
ズルい?それはまぁ男の生理なんですが、え、なんで泣きそうになるんですか?!
わ、私何か彼女に悪いことをしてしまったのでしょうか…?
「羨ましいんですか…?」
「当たり前じゃない!」
当たり前?!残念ながら変わって差し上げられるようなモノではないんですが…
「バカ!」
飛んできたクッションは私の腕に当たり形を変えて床に落ちた。
「あたしだって甘い物好きなのに…!」
「?」
「どうしてエルは太んないのよ…っ!」
……そんなことですか。つまり最初から会話になっていなかったんですね。
「エムさんは十分細いと思います」
「同情なんかいらないのッ!」
投げるものを失ったためか彼女はソファの上でバタバタと暴れ始めてしまいました。
「あたしもたくさんケーキ食べたいよー!」
「食べたらいいと思いますが」
「ヤだ!エルに嫌われたくないもん!」
「はぁ…」
本当に、なんてくだらないことですか。バカバカしすぎますね。
「エムさん」
振り降ろされた手首をとって振り向いたあなたの身体を。
「!きゃ…ッ」
そっと、持ち上げた。
「エムさんが太ってるとか痩せてるとかはどうでもいいことなんです」
「よくないよ」
未だにぐずる彼女は本当に幼くて。本当に本当に、愛おしく思える。
そんな彼女を優しく撫でれば代わりに私の背に手が回りました。
「嫌われるのやだもん…」
本当に私よりも子供で。
「私はそんなことを気にする人よりも、私と一緒に美味しそうにケーキを食べてくれる人の方が好きです」
だからお願いです。
「一緒にケーキ、食べませんか?」
ずっと私の傍にいて。ずっとずっと、笑っていてください。
「…エル」
優しい微笑みが、なによりの魅力。
ダイエットしなきゃ!…私の話聞いてましたか…?
END
thank you 江戸物語
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