※注意
時期的には月・ミサが監禁される前。月君かなりキモイです
「エムさんっ♪」
「あ、おはよーライト君」
早速今日一発目の私の蹴りが飛びました。
「私のエムさんに気安く声をかけないで下さいキラのクセに」
朝から私のエムさんに声をかけて、あわよくば肩に触れようなんて見え透いた考えを持つものではありません、ミエミエすぎてキモイです。
「…痛いぞ竜崎…、それと僕はキラじゃない」
「ではヅラです」
「朝からなんで僕がそんな存外な扱いを受けなければいけないんだーッ!!」
朝からキーキーうるさいですね、と呟いてエムの手をひきながら私はデスクに着きました。
「りゅ、竜崎…?」
「私はエムさんが居れば結構なので、大丈夫です」
ゴソゴソとエムさんを椅子の上で抱きしめていたら、むすっとした表情でキュッと手をつねられました。
「痛いですよ?」
「…ケーキ、せっかく焼いたのに…」
「今すぐ頂きます是非いただきます」
一瞬にしてパッと笑顔になって…本当に可愛い人です。
「さすがエムさんです」
「ふっ…何か勘違いしてないか竜崎?」
気がつくと、私の隣には口元をいやらしく上げた月君が誇らしげに私を見下げていました。
…なんだか癪に触ります。
「…どういう事ですか月君」
「よく考えてもみろ…今日は何の日だと思う?誰の為のケーキだと思う?」
…………
「今日は2月28日、当然ですが私の為のケーキです」
…彼はうつむいたまま腕を組んで、肩を震わせています。
「くっくっくっく…さすがの竜崎も、今日ばかりはその自信が仇になったな…」
「ですから、どういう意味ですか」
「まぁ、精々後で後悔しないことだ竜崎。ははっエムさんのケーキは僕の物だ!」
「!?」
何をふざけた事を言っているんだ彼は…。
とうとう頭皮だけでなく脳まで侵されたのだろうか?
「エムさんのケーキは私の物に決まってるじゃないですか、エムさんは私の恋人です」
「ふふっ…今日という日が分かっていないんだな、いっそ哀れだな竜崎」
…ムカつきます、このキモイヅラ野郎を蹴り飛ばしてもいいでしょうかエムさん…
「竜崎ぃーお待たせー」
「「エムさんっ!!」」
((これでエムさんに声を掛けられた方が、勝者だ!!))
「はい竜崎、シフォンケーキだよー」
「!?」
「エムさん…っ!!」
「きゃっ」
がばっ、とケーキを持ってきてくれた彼女を、私は力いっぱい抱きしめました。
もちろんエムさんを疑っていたわけではありませんが…月君のあの自信、多少不安になってしまった自分を恥ずかしく思います。
エムさん愛しています」
「りゅ、竜崎?」
「エム…さん…」
顔に青線が入っていますよ、分かり易すぎます夜神 月。
所詮彼なんかに私のエムさんが傾くはずもないのですから。
「な…エムさん、そのケーキは…?」
「え?」
「その…どういう意味なのかな?」
「月君、くどいですよ」
「うるさい竜崎!僕は…僕は信じないぞ!!」
「どういうって…」
((エムさん!!))
「竜崎のお菓子だけど」
「そ、そんな…!!」
「エムさん今すぐ結ばれましょう」
「は!?え、ちょ竜崎!?!?」
見ろ夜神 月、エムさんは私のものだ、私の為のケーキだ。
「精々後悔しないでくださいね月君」
「ちょ、竜崎ケーキは!?」
「ケーキは後です。先にあなたを頂きます」
「はぁっ!?」
そして私は、捜査本部に月君を残し部屋へ向かった。
「…痛いですよ」
「いきなり襲ってくる方が悪い」
「平手打ちは酷いです、拗ねますよ…」
そう言って膝の上に寝転んだ私は、髪を撫でるエムさん手に心地よさを感じていました。
「…それにしても…」
「?どうしたの竜崎」
「…いえ、今日は何かの記念日だったかと思いまして」
「記念日?」
28日ねー…と彼女も不思議そうに悩んでいました。
ふと、私も目に付いた彼女のカバンから手帳出し、それをパラパラとめくっていました。
2月、28日…
「なるほど」
「なんか書いてあった?」
…これはエムさんの字ではありませんが…。
「書いてありました」
それ、去年の手帳なんだけどなぁ…と呟く彼女に、私はそのページを広げ示しました。
「あ…」
「今日は月君の誕生日です」
―月サイド―
…そんな…竜崎はともかく、エムさんまで気付かないなんて…
手帳にこっそり書いといたのは気付かなかったのか?
いや、ばれてはいないはずだ。
エムさんのような人が手帳を管理しないはずがない、なぜ気付いてくれないんだ?
いやこれはドッキリで実は最後に『実は竜崎より月君が好きなの』とかそんな企画が待っているのか?
いや、そうだそうに違いない。
焦ってはいけないんだ僕は!
ふふっ…そういう事だな、そういう事なんだな。
「はははっ!!」
「松田、どうしたんだ月君。様子がおかしいぞ」
「そ、そんな事…僕だって知りませんよ。さっきからずっとそんな感じです」
((キモイぞ月君))
「?どうしました松田さんに相沢さん」
「「やっ、なんでもない!!」」
とにかく焦るな僕…エムさんからの告白が僕を待っているんだ。
ははは…ははははっ!!
――ガチャ
「あ、竜崎。頼まれてた資料届いてましたよ」
「ありがとうございます」
ふふっ…あの腫れた頬を見れば分かる。
襲おうとしたは良いが結局『私には好きな人がいるの!』とかいって拒まれたに決まっている、ふん哀れだな竜崎。
きっとすぐにエムさんの方から切り出してくれるはずだ、ふはは…笑いが堪え切れないよ竜崎…
「皆さん、今日はもう上がってもらって結構です」
「!?」
何だと!?
「え、良いんですか竜崎!?」
「はい、今日は皆さんもう帰ってください。キラの動きも見られませんし大丈夫でしょう」
ちょっと待て、今帰されたら…
「エムさんはまだ手伝ってほしい事があるので残ってもらえますね」
「うん、良いよ竜崎」
「ちょっ…!」
何を言っているんだエムさん!!バカな事を言うな、僕への用がまだ終わっていないはずだ。
「どうしました月君」
「え、いやっ…エムさん、僕に何か…」
「どうしたの月君?」
……ば、バカな…
「ほら〜月君帰るよー、それじゃ竜崎、エムさん、お疲れ様でしたー」
「お疲れ様でしたー」
――バタン
「エムさん…本当にやるんですか…?」
「当たり前でしょ。言い出したのは竜崎じゃないの」
「言い出したわけではありません」
キッチンに立ったエムさんに、私の不機嫌さを目で訴えます。
「妬きますよ」
「あたしは焼きます」
「……今回だけですよ」
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『留守番電話サービスです
――月君
渡しそこねちゃった物があるの
これ聞いたらで良いから
ホテルに戻ってきてください』
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「エムさん!!」
あぁやっぱりエムさんは忘れてなかった。
確か竜崎も一緒のはずだが…そんな事はどうでもいい。
「あ、月君!ごめんね…いきなり呼び出しちゃって…」
「いや全然構わないよ!!」
むしろ願ったり叶ったり!!
「あのね、今日…月君の誕生日だよね」
「あ、あぁ…そういえばそうだね」
よし、きたッ!!
いやらしくないよに、出来るだけいやらしくないように、冷静を装え僕。
僕なら出来るはずだ!!
「それで、どうして僕を?」
「あの、お祝いにと思って…ケーキ作ったの」
キタッ!!
「僕の、為に?」
「うん…もらって、くれるかな?」
「もちろんだよ、嬉しいな…エムさんから祝ってもらえるなんて」
勝った……くくくっ…竜崎、笑いが止まらないよ…ははははっ!!
「エムさん…」
「え?」
「やっと僕の物になってくれるんだね」
「ちょ、月君?」
あぁ…良い匂いだ、エムさんのシャンプーとこの柔らかい肌…
「エムさん、僕のた…っぶ!!」
「そこまでです、この変態キモヅラ男。そんなに死にたいんですか」
―竜崎サイド―
「だから言ったでしょうエムさん」
「だって…誰にもお祝いされないのなんか寂しいでしょ?」
「月君は夜神さんもいるので大丈夫でしょう。だから月君にケーキなんて反対だったんですよ、もう」
ゴメンゴメンと、悪びれもなく謝るあなたは何も分かっていない。
「私本当に拗ねています」
「またケーキなら焼いてあげるから…」
「そうではありません」
爪をかじっていた指を、エムさんの頬に滑らせた。
「私はエムさんに誕生日を祝ってもらった事がありません」
エムさんと出逢った時、すでに私の誕生日は終わっていましたから…
ところがあなたはまた、なんだそんな事なんて笑っています。
「なにがおかしいんですか?」
「また今年も来年も、祝えば良いじゃない」
――…あぁ、そうだ、考えてもいなかった。
私は彼女と、一緒にいられる、これからがあるのだから。
「これからもずっと、傍に居てくれるんですか?」
また、あなたは笑いました。
「当たり前でしょ?」
「その時は、私にケーキを焼いてくれますか?」
「うん、良いよ」
エムさんと過ごす誕生日が、これからも続くように。
私は微笑んだ。
…ありがとう月君。
――Happy birthday to Light…
END
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