「へへっ」
私の部屋のソファの上で、楽しそうな声を上げているエム。ちょっと気になりました。
「何を楽しそうにしているのですか?」
「あ…本物…」
「本物とは?」
「え、あはっ、なんでもない」
エムは焦ったように抱いていた物を背中に隠しました。なんでしょう、とても気になります。
「何を隠したんですか?」
「な、いや…何も…」
「見せられないようなものなんですか?」
「えっと…えー…た、宝物だから…」
そんな風に隠すとさらに怪しいですよエム?でも一応、先に事情聴取です。
「その宝物は、誰かから貰ったんですか?」
「え…ううん、自分で買ったよ…?選ぶのにすごい迷ったの…」
つまり、選び抜いたわけですね。あの様子から見ると、なるほどよほどお気に入りのようです。
「それをいつも持って?」
「うん…エルと居る時は…別に良いんだけど…、寝る時とか、一緒に…」
私と居る時は構わない?よく分かりません。私は指を咥えて考えました。
「えっと…エル?」
「エム、それは何ですか?」
「あ、え…、…怒らない?」
「と思います」
「絶対?」
「それは分かりません」
なんて、あなたに怒れるわけがないじゃないですか。しかしエムは恥ずかしそうにそれを隠すだけで一向に私に見せようとはしません。
私も少し、痺れをきらしてきてしまいました。
「エム」
「…はい」
「怒るかどうかはこれから決めます、見せて下さい」
エムの目線まで下りて少しすごんでみました。
「…エル、…怒らないでね?」
そう言うと彼女はそっと白黒な物を示しました。
「…パンダのぬいぐるみ…ですか?」
私は思わずパンダと目を合わせてしまいました。愛くるしいビーズで出来た瞳、タオル地で肌触りの良い生地。
これをエムがニコニコしながら抱き締めていたと思うと…何だかとてもイラっときます。
「え…エル…?」
「…はい」
「パンダと顔…近いよ?」
…何だか許せません。
寝る時に一緒?しかも私が居ない時に?
「ぷっ」
その時いきなり吹き出したかのようにエムが笑いました。私は怪訝に思い、エムに目をやりました。
「何がおかしいのですか?」
「ふふっ…エルが二人居ると思って」
私はさらに悩みました。
私とこの白黒熊猫がそっくりということですか?
「…私はこのようなぽっちゃり体系ではありません」
「そうじゃなくて、…ほら」
そう言って彼女は私と白黒熊を並べて見据えました。
「ね?」
おっきな目とかクマとかが似ててあたしのお気に入りなの、とエムは自慢げに話してくれました。
そこで一つ、私は合点が行きました。
「…だからこの白黒熊猫を抱いて寝ていたんですか?」
エムはピクッ、とほんの少し身震いしました。そういう事でしたか。
「…寂しかったんですね?」
「だって…エルは捜査捜査で忙しくて…逢えないから」
それで…、と。少し涙目になりながら私のシャツの裾を引っ張っていました。
…エム、反則です。
「それではこの白黒熊猫はもういりませんね」
「え…?」
「私がずっと傍に居ます」
パンダの人形を、持たせてみるEND
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