可愛いとか癒し系とかそんなのとはほど遠く、むしろ男の方がそれに合致するなんて。
彼女は女のあたしから見たって見惚れるくらいに可愛らしい。
「可愛くて誰にでも愛される方が全然嬉しいよ?」
「エムはちゃんと自分を見てないだけよ」
こんなに綺麗で、こんなに可愛いのに!なんて。
「よ」
「…ノックくらいして」
着替えでもしてたらどうすんのなんて質問を昔したことがあったけど。
「それを期待してるんさ!」
なんてぶっとばした記憶しかない。
「今日はまた一段と」
浮かない顔だな、なんて言うから、気のせいじゃない?くらいしか言葉が見つからなかった。
「キャロットケーキ」
「ケンカ売ってるんさ」
「食べないなら良いよ」
お皿下げようとしたら、ペロリと一口でたいらげて。
「うまい!おかわり!」
一転、天使みたいに幸せそうな顔で笑うから。モテるんだろうな、ラビ。
「…リナリーにね」
「ん?」
「自分をちゃんと見てないって、言われたの」
口の端にクリームを付けて、食べつつも聞いてくれて。
「俺もそう思うさ」
カチャン、と金属と陶器が静かにぶつかる音がして。
「エムはこんなに可愛いのに」
ぎゅうって抱き締められた。
「エムすげー可愛いもん」
「歯、浮かない?」
だって本当のことじゃん、なんて簡単に言ってしまうからラビなんだけど。
「ラビの方がずっと可愛いんだもん」
何度も吐露した素直な気持ち。
「…へェー」
一瞬変わって、企み笑顔。
「エム」
口移しで感じる甘い彼。
何度も名前を呼んで、くすぐったいくらい耳元で響くいつもと違った低くて男らしい声。可愛いくせにひどく男らしくてちょっと自信家。
「まだ、可愛い男?」
不安な気持ちが吹き飛ぶくらい、愛してるよ。
「格好良いよ、すごく」
「ありがとさっ」
「ねぇ…ラビ」
「ん?」
ちゅって額で愛情確認。
「大、好きだよ」
マジで自惚れちゃいますよ…?君だけのナイトにしてください!
END
thank you 江戸物語
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