「エム?」
「エムー…?」
「……エム?」
どこを探してもエムがいない。
家中、部屋中探してもロードが隠したわけでもない。双子が遊びに連れ出したわけでもない。
「ヒヒッ!ホームレスが襲ったんッス!」
「バカ違げぇーよ!」
エムの居場所を誰も知らないなんて。
「エムさンですカ?」
「どこ隠したのさ千年公〜っ」
隠したも何モ…、なんていつもと変わらないあの顔で。
「エムさンにはお仕事に行っていただきましタ」
「「「「はぁぁぁああ?!」」」」
「嘘だろ…ッ」
エムに仕事なんて初めてだ。
そもそもエムに対エクソシストの力があるなんてのも、聞いたことがない。前線向きの戦力じゃねぇとばっかり思い込んでたのは俺だけじゃねぇはずだ。
「ホント勘弁してくれよな千年公…っ」
─エムになんかあったら俺マジで…
外は寒さもまあまあ、粉雪がちらほらと舞う天気。しんと静まりかえった真新しい戦場跡。
さくっ、と小さな足音がした。
「…エム……?」
またエムによく似合う服は、一際目を引く赤に色付いていた。
「…ティ、き…」
イノセンスを二つ胸に抱えて血のりで汚れた肌で俺を見上げた。
そういうのは俺に言えまたいつものように感嘆も衝撃も持たない表情で、ほんの少し哀愁に瞳をうつむかせていた。
「大丈夫だ」
腕の中で小さな肩は揺れていた。
END
thank you 江戸物語
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