「じゃーん!今日のエムは着物だよーっ」
…だーかーら、
「また何をやってんだお前は」
「キャハハっ、ティッキーが妬いてるー」
なおも笑って跳ねまわるロードを横目で見やってため息。今日は一際嬉しいのか俺の声もいつも以上にスルーしやがって。
「エムを着せ替え人形にして遊ぶなって何度も言わせんなよ」
「イイじゃんエムはなんだって似合うんだからぁー」
ねーっ、そう言ってエムの手を引いてピョコピョコ跳ね続けてる。一方の本人はやっぱりいつもと同じ顔。
「エムが疲れる」
あーエムもってかないでよーなんて言うくせに、ニヤニヤしながら勝手に一人でどっかいっちまった。なんなんだあいつは、…ったく。
「………」
「…や…なんか、悪い」
気付いたら二人きりにさせちまった。
「いえ…大丈夫、です…」
やっぱりエムはあまり多くは口にしない。俺に続く家族のはずなのに誰にたいしても小さくて。
「…まぁ」
なんと言うか、初めて着物着せられたエムのその全部をまじまじと眺めて、感じた感想。
「よく、似合ってる」
なで肩に長い黒髪なんてまた着物のよく似合う条件をもってる上エムはひどく、綺麗っつーか可愛らしい顔をしてるから。
「ロードもそりゃ、遊びたくなるか」
背格好は最も近い家族だしな。
「化粧はロードがしたのか?」
「え…あ、はい…」
ベットに腰かけてエムの背に合わせてアゴを引いてやればその薄く彩られた瞳に俺を映して。
本物の人形よりも可愛くて、愛しい。
「エム…せっかくの晴れ姿だけど」
乱れちゃっていい?
控えめに小さく頷いて、真っ赤になって。
「イイ子だ」
軽い口付けですぐ俯く大人にはまだ遠い俺のお姫サマ。…千年公、兄サン、
俺、お前となら大歓迎「……?」
意味ねぇとか言われるかもしんねぇけどそこは譲れない。
END
thank you 江戸物語
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