「お願いだよエムちゃーん糖分摂取しないと銀さん死んじゃうよー」
「だーめ!」
むすっとした顔でオレを睨んで右手は高くあげたショートケーキ。
「一切れって約束でしょ?」
手を伸ばせば簡単に届いてしまうけれど。
「頼むよエムーエムの銀さんが死んじゃうよー」
絶対そんなことしない。だからエムだってオレを放り投げたりしないでくれる。
「今日はいちご牛乳で終わりです!」
「えぇー」
すっかりげんなりしてしゅんとなってしまったオレを見てほんの少し、エムの心はきゅんとしたみたいだけれど。
「銀ちゃんのためだからね」
そう言ってケーキを冷蔵庫にしまっちまった。
ソファに二人で並んでテレビを見てる時間が平凡だけど幸せな一時なんて、あんまりにも平凡。
「あんまり甘いもの食べちゃダメだからね」
「そりゃあ難しいな」
そう言ってちびちびいちご牛乳を口にする。
「銀ちゃんが糖尿で死んじゃったら」
ぽすん、と肩に軽い重量感。
「あたし生きてけない」
銀ちゃんのいない世界なんか、やだ。言ってから赤面する彼女を見て、あぁ、もうだめ。そんなこと言って我慢しろとか、そっちの方が難題でしょ?
エム、
「甘いものは、まァなんか良いから」
肩をがしっと掴んで目を合わせて。
「俺に食べられてよエム」
難しい注文だすなよなま、エムのためならなんだってするけど。
END
thank you 江戸物語
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