(現代パロ×高校生ぶるッチ)
「…」
「また手のこんだことをしよるのう」
机の中にあった教科書の名前は今日も『ロブ・エム』。ご丁寧にサインペン(油性)で書いてあるので修正液で上から名前を書き直すのが毎朝の日課。
「いい加減エムも観念して俺の名前を貰え」
「どっかいけ変態いい加減訴えるぞ!」
「いい加減ルッチも観念せんのう」
「見てみろ、今日は校章の裏にも書いてやった」
「もうやだ…」
いつ校章(ブレザーの襟に付けるあれ)取ってったんだあのド変態。
「そういえば今日エムのロッカーに文が入っておったな」
「なんだと」
「はー…」
息つく暇もなんとやら、だ。
「なんでついてくるのよ」
「身の程知らずに分からせてやらなければならない」
「前みたいに半殺しにしたら殺すから」
余計な男がつかないことは唯一ルッチに付きまとわれていて好都合なことなのだけど、たまにそんなことお構いなしに呼び出されたりする。保護者気取りだか彼氏気取りなんだか知らないが、現場には必ずルッチがついてくるから、結局どうにもなった試しはない。
「エムさん…と、君は…」
そこには、1年のときにクラスが一緒だったような気がするが、正直申し訳無いのだけど記憶の片隅をほじくっても名前と顔が一致させられない男の子がいた。
「見て分からないのか。こいつの男だ」
それは違う。
「お前が相手にされてないのなんか周知の事実だぞ…用があるのはエムさんにだ」
「ふん、貴様はツンデレという言葉を知らんようだな」
誰がツンデレだ。
彼のお申し出は丁重にお断りせねばと口を開こうとしたら、その口に瞬間がぶりと噛みつかれた。
「!、?!」
「こういうことだ」
去って行った彼が何か言った気がするが、そんなことは一文字も耳に残らなかった。頭の中、というか目の前には文字通りルッチでいっぱいなんだ。
「…っ何がこういうことだ!」
「分かりやすくていいだろう。互いにな」
ルッチの顔もあたしの顔も、ひどく熱くて目眩さえした。しかし、それに嫌な気もしなかった。
人間が望むことは実現できるやってみるものだとは正にその通り。
END
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