「ルッチの馬鹿っ!変態っ!髭っ!」
「……なんだいきなり?」
布団に突っ伏したまま暴言を吐きまくる主人を見て、ルッチは読んでいた本を閉じた。
ルッチの主人─エムは拾ってきた猫よろしく、周りのものを全て威嚇しているかのような体勢だ。
バーカ!バーカ!と騒ぐエムを見ながら、ルッチはスケジュールを頭の中で開く。……先月の7日に赤い丸。
「……ああ。"あの日"か」
「! ひっ、人の生理周期を勝手に見ないでよ!!」
「仕方がないだろう。俺は携帯電話だ。俺の機能を俺がどう使おうと勝手だ」
ルッチの正論に、エムは「う゛っ」とばつが悪そうに黙り込…んだかと思ったら、ボロボロと泣き出した。
「う…わーん!ルッチー!痛いよー!」
「…なら騒ぐな、バカヤロウ」
お腹を抱えてのたうち回るエムを見て、ルッチはため息を一つこぼす。
毎月この一週間はこんな感じだ。情緒不安定で泣いたり怒ったり。
わんわんと泣き喚くエムの頭を撫でてやると、少しだけ泣き声が収まった。
「ルッチー…痛いよぅ…」
「なにか飲むか?」
「…温かいもの欲しい…」
「ミルクティーでいいな?」
「…うん」
布団に顔を埋めたまま、こくんと小さく頷いたエムを残して、ルッチはキッチンへ向かった。
私が生理痛にうなされながら腹部を押さえて、芋虫みたいに丸まっていたら、ルッチがキッチンから戻ってきた。
少しだけ顔を上げると、ルッチの手に私のお気に入りのカップが見える。ゆらゆらと立ち上る湯気がなんとなく安心感を与えてくれた。
「起きられるか?」
「う…」
「…バカヤロウ。無理するな」
自力で起き上がろうとしたら、ルッチに体を支えられた。まだ腹部はズキズキと痛んでいる。
下腹部に少し力を込めると、イヤな感覚。多分、血が出たんだろう。
「ルッ、チ…」
「飲め。少しは楽になる」
「ん…」
ふう、と軽く冷まされたミルクティーが私の口元に運ばれる。ゆるゆると流れ込んでくるそれは、私のお腹を内側から暖めてくれた。
「美味しい…」
「飲んだら寝ろ。アラームはかけておく」
「うん…ごめんね…」
こぼれ落ちたような謝罪。
ルッチは何も言わずに、私の頭を撫でてくれる。それに甘えるように、彼の胸にすり寄れば訪れる睡魔。
気付いたときには、すでに私の意識は下へ下へと急降下していた。
ルッチは一体何時にアラームをかけたんだろうか?そんな事を考えながら。
(さて…どうするか)
アラームをかけようにも、こんなにすり寄られたんじゃどうにもならねェ。
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九鳥。の白江さんよりいただきました!スマホルッチさん…大っ好きです!!
この度は相互、ありがとうございました!
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