「では長官、これで失礼します」
「おう。下がっていいぞ」
…今回は少し、一人で居させすぎたな。
「エム」
「!」
部屋に戻ればベッドの上で丸くなっている塊が一つ。その枕元には留守番をさせていたハットリが寄り添っている。
「おそい」
「…悪かった」
そばに寄って頭を一撫でしてやれば嬉しいのか、ぴょこと毛布から出て俺の腰に飛びついてきた。ここに連れてきたときよりもいくらか血色のよくなった細い腕は、このひと月でようやく年相応までの太さになった。ガリガリだったからな。とはいってもかほ細い、年齢そこそこの少女だ。
「ルッチ、ほんとに、人間なんだね」
「…あぁ」
「慣れない」
「慣れろ、バカヤロウ」
ばかじゃないもん、と唇を尖らせる頭に帽子を預けて黙らせれば、また拗ねたように膝を抱える。
「寂しかったんだからー」
「…」
「ねーハットリー?」
「クルッポー?」
…めんどくせェ。
「…ガルル…」
「えへへ、ルッチだ」
よっぽどこっちのなりの方が人間離れしているだろう、と、獣の口から出るのも可笑しな話だ。
「ふかふか。毛並つやつやだね」
胴体の真横(脇腹辺りだ)に顔をうずめて、何が嬉しいんだか俺の身体をなで上げる。
「人型だとそこはケツだ」
「…サイテー」
「嬉しそうにケツを撫でられる俺の身にもなってみろ、バカヤロウ」
しかめた眉でキッとにらみつけているつもりだろうが、ガキに眼光も何もあったもんじゃねぇ。
「ルッチ、あったかいね」
エムは俺の頭を撫でて、随分と幸せそうに笑う。
「だいすき」
彼女の愛豹…飼われてるのはどっちなんだか。
END
相互記念!九鳥。の白江さんに捧げます。
豹化ルッチと幼女主でほのぼの…というリクエストでしたが…なってませんねごめんなさい埋まります…!
えへへ、相互ありがとうございました!
エピソード的な裏設定が→
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