PROJECT | ナノ


※注意※
元拍手御礼として掲載されていましたので名前変換はありません。
Lは若干変態ですが、大分甘いです。
拍手1・2と多少リンクしています。






「……ん…」

「おはようございます」



今日も、だ。



「……降りて…」

「そんな、こんな格好のあなたを前に我慢できません」




パジャマ用のキャミの肩紐がずれ、更にそれを進めようとしているエルの手。



「……エル邪魔」


あたしは寝起きのせいか重い体を無理やり起こし、変態の魔の手から離れようとした。


「今日は殴らないんですね」

「…そんな気分じゃないの…」


体が…重い。

足元がふらつく。

寝起き…にしては最悪の気分、吐き気さえする。



「シャワーですか」

「……そうだよ」

「ではご一緒させて…」

「へん、たい…」


――バタン




あぁ…本当、重いしだるい…。

声にも足にも力が行かなくて、フラフラする、止まんない。

頭がだんだん、痛くなってきた。




「…風邪、ひいたかも…」



…暖房入れっぱなしでキャミソールで寝たせいね、ひえちゃったんだ。


でも、こんなところエルに見つかんなくて良かった。

少しでも弱ってるあたしを見た、あの変態のする事なんか分からない。



「…はぁ…」




キュッ…とシャワーのカランをひねって、全身にお湯を浴びた。



…熱い…なんか、ボーっとしてきた…





――バタ





少しずつ遠のく意識の中で、必死であたしの名前を呼ぶ濡れるエルの姿を見た。










「え、ル…」



「気付きましたか?」




まだ、視界がもやっとしてるけど…ここは、ソファの上。

額だけがひんやりするけど、身体はなんだかあったかい…



「熱」



「…ン…え?」

「38.6度あります」



そっか…だから、あんなにだるかったんだ…

朝起きて…エルから逃げて…シャワー浴びてて…



「なんで、える…」


「突然浴室から大きな音、シャワーを浴びたまま倒れているのは貴女」



本当に心臓が止まるかと思いました、とエルが呟きながらはぁーと溜息をついた。



「…起きた時から熱っぽかったのでしょう、早く言って下さい。悪化したらどうするんですか…」




エルは寂しそうにそう言った後。あたしの身体が少し、締め付けられた。




…エルは本当に心配していてくれた。

だから、こんな風に少し怒ってるのかもしれない。

これがエルの、愛情。



「…ごめん…なさい」

「…すみません…。言い方がよくありませんでした…謝らないで下さい」



そう言って、あたしの頬にエルの綺麗な指先が触れた。



「まだ少し…熱いですね。まだしばらくはこうしています」





今、やっと気付いた。

シャツを一枚着ただけのあたしはその上から毛布をかけられてて。

濡れたエルに抱きしめられてる。




「この方が少しは温かいです」



「エル…髪が、濡れてる…」


服も、エルの細い身体に張り付くほどびっしょり。




「…シャワーを先に止めずに入ってしまったので」


「エルが、風邪ひくよ…」




「ではそのときは、貴女が私の看病をしてください」




ぼやっとした視界に映ったエルは、優しく笑っていた。





「もう少し、眠った方が良いです」

「…ありがとう」




あたしの頭に乗せられた、柔らかくて温かい、エルの手。




「愛しています」



耳に残るのは、エルの声。




END




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