PROJECT | ナノ


※注意
元拍手御礼として掲載されていましたので名前変換はありません。
基本的にエルは本当に変態です。






「…ね…む……」



いつも通りの朝、いつも通りの悪い目覚め。あと五分…寝たい…

いつもと変わらない…体の重み。



「おはようございます」

「………はぁ…」



勿論重いのは、寝起きだからじゃなくて本当に。

あたしの上に、誰か乗ってる。



「おはようございます」

「……どいてエル…」



どこから入ってきたの何て、もう言い飽きた…、何回か転々とする事があっても。

絶対に朝一番に目に入るのは世界の名探偵。

探偵なんだから…人探しもピッキングも朝飯前なんだろうけど…。



「あとちょっとなんです待ってください」

「……は…?」



あとちょっと?…何がよ…



…ダメ、寝起きで体も頭も働かない…。

朝の日が差して、視力も戻らない…



「…っ…寒…」


すぅっと、一瞬やわらかい風胸に入った。

…窓なんか開けてない…と思うけど…


「可愛らしいですがもう少し露出が欲しいですね、朝ですが構いません一発決めましょう」


「……何が…」

「前者ですか、後者ですか?」


「……どっちも…」

「前者は下着の柄と作り、後者は性行為で「死ねエル」


あぁ…いつからあたし、こんなに寝起きが俊敏になったんだろう。


「う…痛いですよ」


エルの顔面に綺麗に決まった必殺パンチ。


「誰に見せるわけでも無いのに派手な物は付けません、性行為は知らないけど一発は決めました」
あたしは脱がされかけたシャツをちゃんと着て、素早くベットを出る。


「待ってください折角より容易く性交を行える格好に」
「だから一発は決めました」


勿論、性行為ではなく暴行です。




「どちらへ」

「シャワーを浴びに」

「私も一緒に」

「変態」



――バンッ




やっぱりこの名探偵は世界の為に死んだ方が良いと思う。








カチャカチャと金属と陶器の接触する音が、私の朝ご飯…を共にする人の立てる行為。



「…エル、椅子は?」

「必要無いので片付けさせていただきました」




バスルームから今日は普通に出られたと思ったら、部屋の座れるものと思えるものが消えている。


「…あたしはどこでご飯を食べればいいの?」



この部屋に唯一残されたお気に入りの(一人掛け)ソファは、あいにく占領されている。


「ここに座れば良いじゃないですか」

「…あなたが座っているでしょう」

「ですから、ここに」


エルはカップを持ったまま、いつもの体制から普通の座り方に変え自分の膝を指差す。


「…どこに」

「ですから、ここに。私の上に跨ってください」
「絶対嫌」


朝から発情してる変態の上に乗れと、しかもそれを跨るなんて表現してる奴の上に、乗れと。


「絶対嫌よ、というか無理」

「なぜですか。心配されなくてもあなたを支えて下から突き上げるくらいの力は」
「黙れ変態」


こういう時とるべき行動はただひとつ。


「邪魔よ」


占領しかえす事。



ズテンと転がり落ちたエルには見向きもせず、あたしは用意した朝食をテーブルの上にセットする。



「…痛いですよ」

「紅茶はこぼしてない?」

「もちろんです」



転がり落ちたといっても、ちゃんとあたしに迷惑がかからないように配慮はしてくれる。

…だったら最初から家に来ないのが、もっともな配慮なのかもしれないけど。



「軽食ですね」

「朝からそんなに食べられないわ」


エルはむくりと起き上がり、私のソファの隣で指を咥えながらあたしを見ている。


「…紅茶、飲まないの?」

「出来れば座って飲みたいです」


テーブルの上にケーキもありますし、と彼は付け加える。


「…はぁ……仕方ない、わね」



彼はそのままだと床に座るだろう、……ダメ。

あたしは少しつめ気味にソファに座る。




「どうぞ」

「良いんですか…?」

「その代わりあたしは乗らないわよ」




元々一人で座るには大きめのくつろげるタイプのソファだったので二人くらいは狭いが座れる。

彼はぴょこっとあたしを抱き上げると、先に座りあたしをその上に乗せるわけでもなく、自分の前に置いた。




「これなら構いませんよね?」



後ろからエルに抱きかかえられるような感じ…背中全体に彼のぬくもりを感じる。



「…やっぱり少し狭いわね」



彼に真っ赤な顔を見られていないだけ、いい姿勢ね。

エルは後ろから手を伸ばしてケーキにフォークを刺すと、ソレをあたしの顔の前に持ってきた。



「デザートです」




こんな朝も、たまには良いかもしれない。

いつもの日常の、いつもの朝。






残りのケーキをエルがすべてたいらげると、両手の開いた彼があたしを抱き締めた。

変わらずに感じる愛しい彼の温もりと、………と?


「…エル?」

「勃ってしまいました」



変態名探偵。



END

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