※注意
元拍手御礼として掲載されていましたので名前変換はありません。基本的にエルは本当に変態です。
「今夜こそ結ばれましょう」
「嫌よ」
あたしはお風呂を上がってくるなり待ち伏せていたエルに言い寄られる。
指を咥えていつもの猫背、ただの変態だ。
「まだ着替えてないの、早く出てって」
「ですから、そのような手間を掛けずともこれから…」
顔面に必殺パンチ。
「うう…痛いです…」
「そうね、あたしも痛いわ」
「!?私を殴って心が痛むと?ああ、やはり私達は心が結ばれあって」
ありもしない妄想に胸を膨らませるエルを無理矢理押しのけて、やっとの事で浴室から出る。
とはいっても、あたしはまだタオル一枚だ。
「ねぇエル、本当に着替えたいんだけど」
「いえ、ですから今夜こそ」
「このままじゃ風邪をひいてしま…っくしゅん!」
…やばい…こんなエルの前で風邪っぽい態度なんて取ったら…
「…あなた…」
「か、風邪なんかひいてなっ…くしゅん!」
ピクッと身動ぎ、エルの目の色が変わった。
やばい、このままじゃヤられ…
瞬間、体がふわりと浮いた。
「ひゃっ!?ちょっ、エル!?」
「少し黙って下さい」
長い前髪から覗くエルの目が、捜査をしてる時の真面目なものになっている。
ついに貞操が…、…でも、どうせいつか失うならエルが良い…。
…いい加減、覚悟を決めなくちゃ…
そんなあたしの考えも余所に、エルは寝室へと到着してしまった。
しかしエルは襲うでもなく、あたしの体をベットの上にそっと下ろすと、毛布を掛けてあたしの頬を撫でた。
「…すみませんでした」
「え、エル…?」
「湯冷めさせてしまいましたね…すみません」
ベットの隣であたしを覗き込むエルの表情は、寂しそうだった。
「あたしは…大丈夫よ…?本当に少し、湯冷めしただけだもん…」
「そうやって強がらないで下さい。あなたはいつもそうです、体だってけして強くは無いんですから、…無理はしないで」
そう言ってあたしの濡れた髪を指で梳くエルは、そっと続けた。
「それに、熱でも出て看病なんてしてたら…それこそ心配で夜も眠れません。私が風邪をひいてしまいます」
にこっと笑ってくれたエルが、ひどく優しく見えた。
そうだ、この人は…いつもあたしが一番だ…。
「今夜はそのまま寝て下さい、…心配しなくても病人は襲わないですから…それに」
エルはギュッ、とあたしの首に絡みついた。
「あなたの事は、大切にしたいですから」
「…真顔でそんな事言わないでよ…」
「好きですよ」
「…知ってる」
そのままあたしはエルの腕の中で意識を無くした。
「…っん…」
眩しい…朝…、あたしあのまま寝ちゃったの…?
目蓋を開くと、まず映ったアップなエルの顔。
スヤスヤと、小さな寝息を立てて、指を咥えている。
「…可愛い…」
思わず、ぷにっ、とエルの頬を突いてみた。
「…柔らかい…」
柔らかくて、案外肌も綺麗で…本当に子供みたいな人。
途端、体を抱きすくめられた。
「私はあなたの玉肌のほうがよっぽど柔らかく心地良いです」
「いつから起きてたの!?」
「あなたが寝てる時からですよ?言ったじゃないですか、心配で夜も眠れないと」
可愛らしい寝顔でした、と耳元でエルは囁いた。
あたし自身は、顔も真っ赤だから起き上がれない。
「…しかし、そんなに体を私に押し付けて…誘っているんですか?」
「え?」
そういえば、ずっとさっきから、エルの衣服や肌が、なぜか直接感じられる。
「!!」
…あ、あたしお風呂上がったままで…
「…朝になってしまいましたが、結ばれましょう」
「嫌よっ!!」
「しかし既に私達は裸で寝所を共にしてしました」
「嘘よーっ!!」
私たちが結ばれる日は、まだまだ見えない。
END
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