(現代パロ×シスコンルッチ)
「飯だ、起きろエム」
「うう……あと5分…」
「何ガキみてェなこと言ってんだバカヤロウ」
「あ、さむっ」
今日もいつも通り、くるまっていた布団を引っぺがされて起きぬけた。寒い、風邪ひいたらどうしてくれるんだと言った翌朝、一限に盛大に寝坊をかました日には土下座して謝った記憶があるからこれ以上追及はしないように心掛けているだけあたしはそれなりにきちんと学習効果をあげている方だろう。
「さっさと顔洗ってお前の今日の作品を確認してこい」
「ただの寝癖だよパンチパーマ」
「水嶋ヒ○風うるつやパーマだ」
「(古い…)」
「水嶋ファンに詫びろ」
「ごめんなさい」
あたしの寝癖はともかくとして、こんな目つきでひげも生やしたロン毛(ややチリ毛ぎみ)を雇ってくれるまっとうな仕事はあるのだろうか。しゃこしゃこと歯磨きをしながら薄ぼけた頭で洗面台に立っていると、口元の歯磨き粉臭に紛れてコーヒーのいい匂いがしてきた。
「ごはんー」
「いつまでもみっともない格好で居るな、着替えてこい」
「はいはい」
「はいは一回」
「はーい」
「伸ばすな」
「…ちっ」
「そのゆるいアゴくだいてやろうか」
「お兄様の朝食が食べたいので遠慮しときまーす」
「…チッ」
「(自分も舌打ちしてるし)」
みっともないって、まあそりゃあたしの寝巻はジャージだけどね、中学の時の。そりゃみっともないか、とやはり覚めきらない頭で兄が用意しておいてくれた服にもぞもぞ着替える。兄はあたしが一番かわいく見える洋服さえも理解している。ちょっと気持ち悪いけど、今日も我ながらかわいいなと思ってしまうから目はつむっておくことにしよう。キッチンからはフライパンで何かを焼いているジューッという音が聞こえる。
「あ、今日は洋食なんだ?」
「時間見てみろバカヤロウ。焼き魚を食べてる余裕がお前にあるのか」
「わっ、もうこんな時間!?いただきます!」
「…ったく」
Yシャツに紺色のエプロンがこれほどまでに似合わない男の人もそうそういないのだろうけど、ルッチが何から何までしてくれるおかげで、親元を離れて二人暮らしだというのにあたしの家事スキルは0に等しい。楽でいいのだけど試しに皿洗いくらいはできると言ってみても、お前がやると食器が犠牲になるとやらせてもらえない。
「準備はできたか」
「うん」
キュッとネクタイを締める様だけは格好付いてて、会社にもファンの女の人は結構いるんだろうなぁと思うとちょっぴり妬ける。あたしもいつか兄から離れなければいけない日が来るんだろう。
「花嫁修業が大変だわ、こりゃ」
「お前を嫁に欲しいという奇特な趣味の奴がいればな」
「何おう」
「エムは何も出来なくていい」
「なんでよ?」
「俺がお前を嫁にやる気がないからな」
そう言った兄のほくそ笑んだ横顔に、あたしは修行を始めようと決意した。
兄による妹ダメ人間化計画妹を手離す気なんて更々無い
END
(某有名人さんを古いとかいってごめんなさい)(土下座)
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