いきなりすぎてなんにも分からないままだったのに。
目が覚めた瞬間からびっくり人間ショーの幕開けだ。
「…長っ…鼻?」
「元気そうなお目覚めなようじゃな」
ていうか起きた瞬間顔と顔の距離が10センチってなんですか。襲いかかる準備万全かよ。
「お姫さんには王子のキスが必要かのう」
「王子ってどこに?」
「はて、何か言ったか」
「ごめんなさい申し訳ありませんが現在あなた様のような王子の募集はしておりませんお願いだから刀しまって!」
そうか、って言ったくせに降りかかってきたいきなりのキス。しかも、意外と濃ゆーいのをいただきました。
「ところで突然じゃが娘、名前は」
「…エム」
突然っていうならその接吻を突然っていうんじゃないか兄ちゃん。記憶にないがファーストであろうあたしの唇はピノキオさんにあっさり、しかも濃ゆく奪われ。
「どこから……とは言っても、見た目で明らかかの」
海岸に打ち上げられたあたしの身体の下半分は海に浸かっていて、明らか漂流者っぽいんだけど。
「よく無事に島に打ち上げられたもんじゃな」
「?」
「…まぁ、不審人物として一応長官に報告させてもうぞ」
さっきまで背に感じていた砂浜は次の瞬間風が吹き抜けた。今あたしの身体は王子殿の肩に担がれている。
「え、何攫われんの?あなた変態ですか?いやそんなあたしが可愛いからって」
「めちゃくちゃ楽観的じゃの」
なんだろう、あたしは怖いもの無しな性格なのか。自分の状況を、全くもって悲観していなかった。
「ここは政府所有の司法の島、エニエスロビー正門。ほれ、目の前は滝じゃぞ」
謎だらけの彼女、謎の島
「うわ!まじだ、あたしよく落ちなかったな!」
「まったくじゃ。渦潮もそばにあるというのに、おぬしいったい」
「きゃー高い高い!お兄さんすごいね、空飛べるんだ!」
「……カク」
「ん?」
「カクじゃ、ワシの名前」
全てはこれからこれから。
(カクさん任務帰りお疲れさまです!……その少女は?)(荷物じゃ)(で、ではお持ちいたします!)(構わん、重いからの)(レディには気を使え長っ鼻!)(切り刻んだら軽いかのぅ)(ごめんなさい!)
END
←|back|→