「ここね!」
あのときジャブラにサン・ファルドに連れてってもらった以来の海列車。海の上を走るなんて、やっぱり感動した!下車した駅には仮面を被った人でいっぱい、そういえば例のお祭りも仮面をかぶるって有名だった、あれかな?観に行きたいなー。
ルッチやカクに連れてってもらおう。
「あの、すみません駅員さん」
「はいはい、なんですかな」
「こういう眼つきの悪い男と、長っ鼻セクハラ王子と、とんでもない秘書風美人知りませんか?」
「どうしたルッチ?」
「『…ななななんでもないっポー』」
「ど、動揺しまくりだぞ…?」
全身が鳥肌立った。気のせいにしちゃリアル過ぎる。目を這わせばカクもカリファもそ知らぬ顔付きで仕事をしている、俺が気にしすぎただけか。
「『…何でもない。さっさと行くッポー』」
「お、おう…」
俺以上に動揺しやがったパウリーをバカにする余裕もなかった。本当にひどく俺はエムに依存してやがるのか。あそこに置いてきてもう…
「ハ、ハレンチだぁーッ!!」
耳元でこれまでにないほどに響き渡るパウリーの悲鳴は俺的パウリー史上最高のハレンチコール。
「『バカヤロウッ!うるさすぎだッ』」
「いたッ!」
「「「!?」」」
俺たち全員が一点に目を向けた、もちろん今のパウリーのバカデカい声にドッグ全員が集中したが。
「「「(なっ……エムーッ?!)」」」
一瞬、目を疑って、驚愕とともに衝撃が走った。
カクは一番にうなだれて泣き始め、カリファは静かに憎悪をたぎらせ、ハットリは羽をやたらとばたつかせた。
「(かっ…髪が……エムのロング美髪が…)」
「…セクハラだわ…っ」
「ンマー、どうしたんだカリファ…?」
俺は、ただ。
「(…エム…)」
青ざめて立ち尽くすだけだった。
エムの腰の辺りまであった長い黒髪は姿形もなく見た目にもさわやかすぎるショートに変貌をとげていた。
「アイスバーグさんですね!」
「こここっちに来るなハレンチ娘ェーッ!」
エムは各々凍りつく俺たちの横を通り抜けアイスバーグの隣まで行くと、その足を止めた。
「ンマー、写真とは大したイメチェンだな」
「大工になるからには形から引き締めようと思い至りました!」
「ンマー!いい心がけだ!」
…………………………は?
今度ばかりは俺らだけじゃないドッグ全員が凍りついた。
「「「(今何んなるって言った?)」」」
「ンマー、急に決まったから話出来なかったがな。新入りのエムだ、仲良くしろよ」
「よろしくお願いしまーす」
「カリファ、職長たちを集めてくれ」
ルッチ、カリファ、カク、パウリー、ハットリ、硬直。
嘘だと言ってくれ!
笑えねぇ冗談だ!
END
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