「ねージャブラ!これかわいい!」
「あ?さっきの花柄と何が違うんだよ」
「は?全然違うよ、これ小花柄だし、ピンクだし。おっさんには分かんないか…」
「誰がおっさんだテメー」
「これとかどう思う?」
「…勝手にしてくれ」
ブラさんは約束通り買い物に連れ出してくれた。
海列車ってやつすごい!海の上を走るんだ!とぎゃいぎゃいやってたら「うるせぇ!」と行きの列車の中でさっそくたんこぶをひとつ作られた。
この町はサン・ファルド、お祭りの頃には仮装カーニバルで有名らしい。それはそうとブラさんの呼び方が変わったのは、エニエスロビーを出るときに「いい加減その女の下着みてぇな呼び方やめろ」と言われたからだ。なんだ、あたしは割りと気に入ってたのに。
そういうジャブラは、なんだかつまらなさそう。
「あたしと一緒でつまんない?」
「あ?」
「さっきから適当な返事しかしてくれないし」
「そりゃお前、俺に女の洋服のこたァわかんねぇよ」
「ふーん、つまんないの」
「お前が俺につまんないのかどうか聞いてきたんだ狼牙」
まぁなんでもいいや、とあたしは買ってもらったクレープをもぐもぐしながら、その後ろを買い物袋をたくさん提げた肩を落としたジャブラがついてくる。有意義な休日だ。長官が本当に偉いんだったらあの島にもショッピングモールのひとつやふたつ作ってほしいってお願いしたらできるかな、なんて考えてたら、ふと、立ち止まった。
「どうした」
「ジャブラはあたしが、どこから来たか気にならないの?」
「あァ?」
実際、どこから来たのかなんて自分が知りたいくらいなのだが、ここの人たちは最初のとき以外それをあたしに問い詰めたりはしなかった。そのおかげもあってとても居心地良かったし、楽しかったんだけど、そこのところはどうなのか。
「お前聞いたってわかんねぇんだろ」
「うん」
「じゃあ意味ねぇじゃねぇか」
「まあね」
「それに、」
「?」
「…いや、なんでもねぇ」
急に言葉を切り上げたところ、何か思うところでもあったのか。
…まあ、気にしても仕方ないか。分かんないもんは分かんない。なんだかジャブラが一番心を開ける、オッサンだからかな、懐が深い感じがするのだ。
「あたし、ジャブラ好きだよ」
「あァ?!」
「〜っなに?!耳元でうるさい」
そう言えば途端に耳まで真っ赤にするこの人は、こんなことで仕事が務まるんだろうか。
あたりはすっかりオレンジに紺色が浸食していくような、綺麗な夕焼け。たまにはあそこから出るのも悪くない、かな。
「……日が暮れてきた。最終便が行っちまう、帰るぞ」
「はーい」
一番星見つけた!
おうちに帰ろう!
「(あいつ…どこに行った)」
「(エムはどこじゃ?)」
「おい!お前ら帰ってきたらまず俺に報告に来るだろ!いつまでエムを探してやがんだ!次の仕事があるんだぞ!」
さくっと要人暗殺済ませて帰ってきたのにターゲットが見つからない二人の殺し屋さん。
END
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