「よよぉい!あ!生命帰還ってぇのは」
「え、すごいすごい!髪動いた!クマドリすごいね!」
「それなら俺もできる」
「うわっ、ルッチの髪もずくみたい、気持ち悪」
「?!(もず、く…)」
手取り足取り指導をしてくれる家庭教師が、あたしにはたくさんついている。
「ぎゃははは!もずくたぁ言いようだなルッチ!」
「指銃」
「やんのかてめェ!」
「お前ら仲良くやれよ…」
あの日の長官たちに言い渡された通り、あたしは六式体得のための修行に勤しんでいる。とはいえ、六式と言ってもあたしに体得を承認されたのは『剃』『月歩』『紙絵』のみ。直接人を殺傷できる能力については、実際CP9でも何でもない一般人が体得するのは望ましくないとのこと。(って、ルッチが言ってきた)
いやまあ、やれって言われても無理ですけど。
「エム、面白がって見ていることを訓練とは言わんぞ」
「ぎゃあ!嵐脚やめて!」
そんな中でも逃げ足だけは早くなった自信がある。剃も少しだけ(加速程度だけど)できるようになった。こんな超(変)人に囲まれてスパルタ教育を受けている身にもなってみろ!本当偉すぎて自分でも泣けてくるくらいだ…
「エムもそろそろ空飛んでみるか?」
「月歩?」
「こうだ」
「こう!」
「それはジャンプだ狼牙…(本来剃だけでもエムみてぇな一般人が身に付けられるのは異常だがよ)」
あたしにとってはここでの毎日がバタバタ目まぐるしく、気付けばひと月が経っていた。
ブルーノとカリファとフクロウは少し前に任務に出てしまっている。姉さんがいなくなって少しがっかりしたけど、それを感じないほどに日々必死にあらゆる身の危険に直面しながらも過ごしていた。
「よし…まあエムの指導も誰か一人が見てりゃあ問題ねェだろ。ルッチ、カク、クマドリ!次の任務だ、俺の部屋に来い」
「あ!次の任務かァ〜、よよい!」
「ようやくか…」
「わしらが帰ってくるまでにエムはどこまで体得できるかのう」
「え…ルッチとカクまで、行っちゃうの…?」
暫しの、沈黙。
「長官、チェンジを希望する、わしは残るぞ!」
「ちょっ、何言ってんだ!おいルッチリーダーとして何とか言ったれ!」
「俺の添い寝が無いと寝られねェとは…仕方ない、俺が残ろう」
「そーいうことじゃないんですけどォ…!」
はじめてのおるすばん
「俺がいるだ狼牙」
「なんだ、ブラさんいるならいいや」
「安心しろ、帰ってきたら存分に可愛がってやる」
「ルッチは帰ってこなくていいです」
「!!」
「(ルッチが涙目じゃ)」
END
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