─コンコン
ぼーっと意識をどこかに浮かべているとドアの外から音がした。
「エム、入っていいかしら」
「どうぞ」
どっかの豹と違ってきちんとノックをして彼女は部屋に姿を見せた。
「長官が呼んでいるわ、今すぐにだそうよ」
「…ん、了解…」
カリファはあたしの格好を見ても顔色ひとつ変えずに落ち着いた口調で伝令をしてくれた。落ち着いた大人っぽさは、歳上のあたしから言わせたって本当に綺麗。CP9に歳の差なんて関係ないけど。
とにかく、気だるい体を起こして髪を掻き上げた。
「どうしてカリファが?」
司令は電伝虫で長官に招集されるのに。
「あなたが出ないから呼んでこいって」
人を顎で使うとはまったく先代と同じで勝手な長官サマだ。勝手にキレてたんでしょうねなんて悠長なことを考えていた。
「分かった、ありがとう」
「それじゃ、私は出てくるからあとはよろしくお願いね」
「うん。いってらっしゃい」
カリファの後ろ姿を見送りながら小さくあくびをかいていると、彼女は不意に立ち止まった。
「…?」
「彼もセクハラね」
それだけ言うとドアは閉まった。
「やっぱり」
鏡なんて見る必要もない、見たくもないのが本音。どうせ噛み付きぐせのあるルッチの歯形だって残ってるに違いない。
シャワーを軽く浴びていつもと同じスーツに袖を通して、あたしは部屋を出た。
「エム!テメェ何俺のことシカトしてんだ!」
「ごめんね長官、…ふぁ…」
「オォイエム俺を敬う気無さすぎだろ…?つーかなんで当たり前のようにタメ語で話しちゃってんの?!」
あたしだけが呼び出された一室。
この部屋にはこの長官とあたししかいないし、それどころかこの搭から他のCP9の気配がしない。
「他は全員任務で出てんだよ!ったく、お前しか俺を守る奴がいねぇっつーんだから…俺になんかあったらどうすんだ!」
「ご愁傷さまです」
「身を呈す気ゼロ?!」
長官の独り言は長い。
この人も今更だけれど世界は自分を中心に回ってるとでも本気で思ってそうだ、鬱陶しい。髪がくるくるぱーな男は中身もくるくるぱーな奴ばっかりだ。
「今胸ん中で俺をバカにしてただろ?!」
「滅相も無い」
「そう言ってる顔が既に見下してる感全開じゃねえか!ちょっとは隠そうとしやがれ!」
…うるさい。
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