──久しぶりの穏やかな日和。ここ最近照り続けていた日射しが和らいでいた。
任務もなければたった一人で静かに好きなことのできる貴重な時間こそずっと溜めていた本と日向で過ごしたいと思っていた。
「………」
「何を不服そうにしている」
のに。
ノックはおろか物音すら立てずに一匹の豹はあたしの部屋にズカズカと入りこんできた。よりによって、ソファに座っているあたしの真正面に。
はっきり言う、邪魔だ。
「暗い」
「それがどうした」
「邪魔」
「知るか」
疑問符ひとつない語尾に退く気なんて元から無いという宣言。文句を言ったところで仕方ない、ため息ひとつであたしが移動した。
「…それで」
横目で豹を見る。
「どうして座るの」
「空いたからだ」
「…」
邪魔な奴+影から避けようとしてわざわざ移動したというのに人の部屋にズカズカ入ってきたあげく、席まで陣取って。
「…ルッチ」
あたしの本までとりあげたときた。
何も今に始まったことじゃないけど本当何様のつもりなんだ、本当に今更だけれど。
こいつなら世界は自分を中心に回ってるとでも本気で思ってそうだ。
「クルッポー」
ハットと本を机の上に置いてシュルリとネクタイを外す音。それを合図にルッチの肩にとまっていたハットリは羽ばたいていってしまった。
「返してよ」
「これが済んだらな」
机の上に置かれた本に手を伸ばせばその腕を掴まれて身体を倒された。
「重い」
「黙ってろ」
本来二人掛け用のソファの上に押し倒されたら距離なんて無い。直に当たる胸板がやけに熱く感じられる。
「これから任務?」
「だったらなんだ」
そういいながらボタンをひとつずつ外してく。丁寧なだけマシだと思うべきかもしれない、……なんであたしが妥協しなきゃいけないんだ。
「そこ、見える」
返事を溜めていれば紅い催促が咲き始める。おかげさまであたしの眉間には不快とイラつきで通常時のロブ氏同等の深いシワが寄った。
「だったらどうするんだ」
拒むのかとは聞かない。第一答えたって豹の動きに変化はない。拒まれたところで拒ませる気はない、そういう男だ、残念ながら。ましてや一度スイッチを入れたら止まりはしない。
なんたってCP9の誇る万年発情期。色事任務ならまさにお任せだ。
「変態」
「言ってろ」
結局潜り込んできた掌は何の答えもくれなかった。
「…ん」
ここに夜は訪れてはくれないから、空を見たって時間の流れは認識は出来ない。
「…もう夕方」
机に置かれた本の上にはハットの代わりに懐中時計があった。その針が指していたのは4。
彼が部屋に訪れてからもうずいぶん経ってしまった。
「相変わらず」
ボソリと小さく、深いため息と一緒に呟いた。
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