「おうルッチー!潜入調査の方は順調か?」
「……ご無沙汰しています」
盗聴対策なんて露ほども気にかけず、平気で一般回線から連絡を入れてきやがるこの上司には今や一切の情を感じない。呆れるのも体力を使うレベルだ、くだらねェ。
「どういったご用件で」
「いやーお前用件ったら、設計図に関する中間報告くれぇだろうが。どうなんだよ」
「…先日ご報告した通り、実物の手がかりはありません。ただ…近頃一点、気になることがありましたので、その人物については引き続き調査していく予定です」
「お?あぁそういえばそうだったな…んだよー進展ねぇのかよー、最強の諜報部員が聞いて呆れるじゃねェか」
このド阿呆長官はよほど暇を持て余しているのか。ボスの器を持ち合わせていないどころか、道力9の実戦にも役立たない上司の言動に一々付き合っていられるほど、こっちは暇じゃない。
「そちらには誰もいないのですか」
「まったくだ、なんで俺の身を守る奴が誰も控えてねェんだよ…―っだぁあっちー!誰だよコーヒー溢したやつァ!くそが!あー…そういや今日ジャブラとエムが長期任務から帰ってくるとかって連絡を貰ったな。時間は…そろそろ着く頃か。おし、じゃーなルッチ、しっかりやれよ!」
―チン
阿呆の暇つぶしに付き合わされたところ結局は何の生産性もない会話に終始することになった。よりにもよって会社にかけてくるとは、上司の常識の無さに改めて呆れることに諦めを感じた。
「…」
エムは任務を終えたか。
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