「カク!そこの客が査定の依頼に来てる、ちょっと見てやってくんねェか」
「了解じゃ。ではルッチ、ここは任せたぞ」
「『任せておけ!クルッポー』」
「アイスバーグさん、お昼は市議会の方々との会食の予定です」
「いやだ!」
「では全てキャンセルします」
「ああ。おうおめェら、仕事に一旦カタついたやつから昼飯だ!飯抜いて仕事したやつァ減給だからな」
「分かってますってアイスバーグさん!」
今日も笑えないほどに当たり前の一日が過ぎていく。自分の本分を考えれば気持ちのいいとは言えない汗を流し、他愛もない世間話にも適当に相槌ちをうち、毎晩のように酒を飲む。諜報活動における潜入は慣れたものだが、こうも人殺しから離れたのは初めての経験かもしれない。
「カリファ!また布面積をケチりやがって!恥を知れ!恥を!」
「あら、そんなところにばかり目の行くパウリーこそ、セクハラなんじゃないかしら」
「…ってめぇぇえ!!!」
「ンマー、そう敏感に反応するな。いい目の保養だ」
「アイスバーグさん!ってかお前カリファ!アイスバーグさんに蹴り入れてんじゃねェよ!」
「ちょっとは静かにせんかおぬし」
こんな非・日常を送るためにここに来たわけではない。早いところ長官の所望する設計図を手に入れなければ、このくだらねェ毎日をまだまだ続けていかなければならない。命の危険が少ない分、強行手段に踏み切れないのも苛立ちを募らせる要因の一つだ。
「ルッチ」
「『なんだ』」
「…いいえ、何でも。ただ」
随分不機嫌そうだわ、と言ってカリファはアイスバーグと社内に戻っていった。
←|back|→