それは歴史には残らない。
“大海賊時代”と呼ばれ始めて4年が経った。略奪者が蔓延るこの時代にはありがちで、弱者は耐えることしか出来なかった。ただの幼い子供にはあまりにも残酷すぎる出来事。
燃えさかる孤島の孤児院、足元に転がる死体死体死体。その赤の中にたった10歳の二人の少年と少女。震え声を殺して泣いている少女を胸に少年は涙を流すわけでもなくただその光景を目に焼き付けて、歩き出した。
「俺は」
呟く声は泣きじゃくる少女の耳には届かない。
あどけなさを一片も覗かせないその姿とあまりに鋭すぎるその目に哀しみは浮かばない。ただ腕に力を込めて、少年らしい声音などそこにはない。
「弱くありはしない」
最後に聞いたその言葉はあまりにも冷えきった低さだった。
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