どのくらい眺めていたかなんて彼らも忘れた頃に突然、少女は言い表せない感覚を覚えた。
「(……な、に…)」
肌から感じる、
鮮明に何かを感じる、
でも何か言葉にする方法は浮かばない。
ただ感じる事態に血の気は引いていき手足が震えた。
「…る、ち…」
「なんだ?」
突然少女は冷や汗をかいて立ち上がった。
「早く、帰ろう」
震えがその右手を伝って少年に届く。
「エム……?」
暗がりが怖いのかと聞けば違うと言う。ならばなぜこんなにも震え青ざめていると、言葉にしないまでも思った。
「エム、どうした」
少女の目をじっと見つめた。カタカタと震え、こんな暗がりでも分かるほどに顔色が悪い。少女はゆっくり立ち上がった少年を見上げぎゅっと手を握った。
「嫌な…感じがする……」
思わず少年は眉を寄せた。少女は今にも泣き出しそうな表情で少年に告げる。
「、…人が…消えてる…」
その意味を考えてる間など無かった。
「走れるか」
「う、ん…っ」
突拍子もないその言葉に疑心をもたなかったのかは少年自身分からなかった。ただ普段から感情を表にあまり出さない少女が、あまりに怯えていたから。少年が走り出す理由は、他にいらなかった。
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