関わりたくない、本当に本当にもう放っといて欲しかった。この男のことなんて忘れていたつもりだった、だって10年も昔の話。
この男に何かほじくり返させるような言葉が飛び出たら最後あたしは正気でいられる自信がなかった。
だから簡単にあしらって歩み始めようと思った。
「あの頃となんも変わっちゃいねぇな」
あたしには所詮この男の前で大人になることなんて、無理だった。
「何をそんなに恐れてやがる」
この男にはあたしは取り繕えない。
「…なんだっていうの」
また、だ。背筋が、凍った。
「…やっぱりお前とルッチを引き剥がしてでもお前を殺し屋なんかにさせるんじゃなかったな」
こういうのを、今更だって言ってるのに。一体あなたはあたしに何をしたいの。
「お前にCP9なんざ似合わねぇ」
「…クザンいい加減に…っ!」
「話を聞けエム」
凍っていたのは背中なんかじゃない。逃げ出したくて仕方ないのに動けない。足が、冷たかった。
「10年前。既にあいつには確かな覚悟とそれを確固とさせる素質があった」
「…やめて…っ…」
「俺はあいつを見た時ガキだとはとても思えなかった。あいつにはそれだけの元来の強さもあったからな」
嫌だ
嫌だ
嫌だ
もうこれ以上何も言わないで
「別に海賊に襲われて身寄りを失くしたガキが海軍に助けを求めに来るのは当たり前だ」
「いや、」
「孤児のテメェらに何があったかなんざ興味はねぇ。あいつにもお前にもそれなりの何かがあったのは、まぁ分かる」
「クザン─…っ、やめて…!」
「だがお前は」
「やめて!!」
「お前は何の為にここにいる」
あたしに過ぎったのは憎悪でもなんでもない。
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