long(op) | ナノ



白くしなやかな手足とあいつの黒髪はこの寝具の上でもよく映える。

伏し目がちにして覗けばくっきりした睫毛に縁取られた目は閉じられていて俺の胸に向けられている。所々に見える鬱血した部分は慣れない俺のせいで血が滲みそうな程に紅々としていて、俺の性以外の本能を駆り立てる。


「こんなにはっきり付けちゃだめだよ、相手は不倫なんだから」


腕に横たわるあいつは目を落としたままそう言って溜め息をついた。距離を持たないままでいた肌をやんわりとかすめた吐息に眉がピクリと動いた。
対称的に片腕に感じる軽い重みは胸に手を当ててぴくりとも動きはしない。


「毎日ここ、来て」

「…分かった」


その会話自体は常々の俺たちと変わりない。素っ気ないというか、まあいつだってこんなもんだ。

だがそこに流れる空気は些かの違いがあった。気のせいだと思っても構わない程度だが、それが目に映る人間が少女ではなく女であったからなのかどちらにせよ俺には分からないことだった。

視線が絡み合ったところで言葉など無かった。


あのとき廊下ですれ違ったカリファが俺同様色事の初任務を完遂した報告に行っていたことを、俺は任務出立直前に聞かされた長官のぼやきから知った。



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