6年前。
意識すれば、珍しかった光景だ。
「…あら、ルッチ…」
血まみれのカリファ。
「任務上がりか」
「えぇ………エム、どこにいるか分かるかしら?」
カリファに出会ったことは別になんてことじゃない。その服に着いた任務の汚れを落とさないカリファに出会ったことが珍しかった。これがバカ犬やカクなら別だが、カリファやエムに至ってはまず無いこと。あいつはそもそもそんな格好で部屋に戻るのは嫌だと言っているクチだ。
「部屋だろう」
「そう…ありがとう」
既に乾いた黒ずんだ染みは服にこびりつき、顔を汚したままだ。肌についた血痕はパリパリと所々剥がれ落ちている。カリファはその廊下を歩み、俺はカリファが来た方向に足を進めた。
「任務だ」
「はい」
渡された資料にさっと目を通す。
─諜報、暗殺─
とりあえずその文字だけは目に入った。それだけといえば、それだけの内容だ。
ところで長官は俺の姿を先ほどから爪先から頭までジロジロと気持ち悪いほど眺めてくる。まるで、任務に俺が適任なのか見定めるようにだ。
「ルッチ、一つ尋ねるが」
「はい」
スパンダイン長官は俺の姿を凝視して、言った。
「お前、歳は」
「14です」
「女を抱いたことはあるか」
突然の質問に俺は思わず眉を潜めた。
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