long(op) | ナノ



「…どうしたの」


長官への報告も済ませ電伝虫が目を閉じた時だ。エムが、ここに戻って初めて口を開いた。


「…なんだ」

「さっきから…、船を出たときからずっとピリピリしたまま。海兵がみんなビビってたじゃない」


そんなに気を立たせるなと言いたいのか。


「……来い」


立っていないといえば、嘘になる。微小な感情に左右される自分なんて俺もまだまだ甘いな。


「身体、重い…んだけど」


腕なんて引かなくても、お前は俺の後ろから離れやしない。


「酒が廻ってきたのか」

「…あれ…何か薬が、溶かしてあった」


瞬間。
ふらりとエムの身体がよろめいた。


「随分耐えたな」

「…アンタみたいに、身体の中で中和できる力は…ないけどね」


支えた身体は細く華奢なエムを強調するように軽く、抱き上げれば弱々しくうなだれた。


「医務室、行くか」

「ん…休めば、平気…」

「そうか」


傍に居てやれば、そのまぶたをすぐに閉じて。安心しきるのもいい加減にしやがれなんて憎まれ口も、たたけずに。結局お前は俺の横に寄り添う。

すでに意識の無いエムの右肩に触れればあるのは素肌の柔らかい感覚。当たり前だが傷口なんてものはない。守りたかったなんてそんな意識は毛頭無かったはずだ。


「──それも、言い訳か」


エムに手を出した相手を殺してやりたい衝動に駆られた一瞬に対して。
エニエスロビーへと航路をとる護送船の一室にエムを寝かせ、俺はシャワールームへ足を向けた。



END

ドラッグについては完全にぬるいド素人の本のチラ見程度の知識で作らせて頂きました。(あんまり詳しいと逆にアレなので)薬は決して推奨しておりません。



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